オズ夜美こらぼ番外編 | ナノ


手のひら返し


「夜美。あの男ははジオみたいなもんなんじゃ! 他人に手をだすならワシも関係ないし、黙っておくがお前ならワシも黙ってられない!
 不誠実でいける女ならなんでも食う。ただ、食うためだけにじゃぞ!? あり得ん!」
「……シバ、お前は私をそう思っていたのか……」
「大丈夫ですよ。シバは貴方の行動に興味関心は針の幅位にしか抱いてませんから」


 シバ達のクラスに連行されて、ただ今説教されてる。
 多分、オズのことだろう。何が因果か、私はオズに告ってしまったらしく、なら付き合ってあげていいけど嬉しいでしょ化物にそんな機会ないもんねしかも僕みたいな男とだよ、みたいな嫌みをはね除け寝首を切る覚悟をして付き合うことにした。
 それに大反対なのは、兄のシバと父さん。弟はもう誰でもいいんじゃないと言われた。姉ちゃん寂しい。

 で、現在もシバに怒られてる。何でも、オズの女タラシが気に入らないらしい。そりゃ私も嫌だよ。


「あの男は最悪、夜美を性の道具としか……!!」
「はぁ、だから何なんです?」
「阿弥央!?」
「手の平で踊らされているなら、手の平を返したらいい話でしょう。そして相手を逆に支配し翻弄する」
「悪どい! 阿弥央は流石だな!!」
「黙りなさいジオ。そ・う・で・す・ねぇえ……」


 椅子に足を組んで座っていた阿弥央が立ち上がって、シバの前で正座してる私をジロジロと見下ろしていた。


「まずは、破壊神の呪いからですね」
「え」


 阿弥央が私の頭から何かを流し込んだら、体がめきめきと音を立てていった。少し高くなった視野に、シバもジオも目を丸める。


「髪型と服装は……あの男の趣味思考がわかりませんからねぇ。理解したくもありませんが……これでいいか」


 パチンと指をならしたら、服装が浴衣になっていた。
 阿弥央が手鏡をこちらに向けたので、その鏡に映ったものが視界に入る。


「……え?」
「貴女の身体は、中学生あたりで止まってますからね。元の成長スピードに合わせた貴女の姿です」


 その鏡に映っている人は、見たこともない人だった。セミロングに髪を切り揃えていて、上の髪の部分だけ後ろに一つにまとめてる。
 大人びた顔つきに、少し切れ長になった瞳。胸も結構膨らんでいた。


「こ、これ……私……?」
「夜美、オズより私の方があいてっ」
「ふざけるなよ」
「シバこわい!!」


 シバにアホ毛を引っ張られたジオを放置して阿弥央は私に言い聞かせた。


「それで、あの男を押し倒しなさい」
「はい?」
「あの男は……きっと本音とか好意を向けられたら、慌てます。そこをおさえたら手玉になるでしょう」
「阿弥央助けてぇえええ!!」
「お前もタラシ過ぎるのが悪いんじゃ何で好いとるおなごだけで十分にならんワシなんて美代に〇〇されて〇〇〇〇されたらし」
「そこの二バカ。二度と我に関わるな」
「阿弥央ぁああ!!」
「あ、ちょ。待て阿弥央!!」


 私は、教室から出ていった阿弥央を追いかけた二人を呆然と見送った。そして我に返り、立ち上がって意気込む。


「手の平を返す……頑張ろう!」


 形成逆転、成し遂げてやる。


▽△


 オズは何時も、屋上か図書室にいた。基本的に人が少ない場所。そこらをキョロキョロと探すと、屋上に見慣れた三つ編みが本を読みながらパソコンのキーボードを打ってる。……器用なやつ。

 そっと気配を消して、アイツの背後に回った。暗殺者だからか、オズには気づかれてない。
 やるなら、徹底的にだ。

 ゴクリと息を飲んで、オズが気付いたから振り向こうとしたんだろう。慌ててオズを抱きしめた。


「んむ。……ん!?」

 うわ、位置的にオズの顔に胸押し付けてるみたいになってる。最悪だ。
 だけど、成長した自分を見せなきゃならないのに、赤い顔を見せるのが恥ずかしくて、そのまま作戦を実行した。


「好き」
「ふっ!?」
「大好き、なんだよ」
「ん、んん!! んんんん!!」
「オズのこと、好き……」


 何処をと伝えられるのに、出てくる言葉は単調なもので。
 やっぱり、ガキなんだなぁと再確認させられる。
 オズを離して、何か言おうとする前に唇を塞いだ。

 少し目を開くと、真っ赤な顔で、黄緑色の瞳を震わせるオズ。
 ……か、かわいい?


「おずっ」
「な、お前夜美!? な、はぁ!? 何勝手にでかくなってるの!? 何してるの!? 頭いかれた!? ばば、ばかがさらにバカになったの!?」
「もっと、ちゅーしたい」
「は、はぁああああ!? ちょ、止めてよこの痴女! 僕はやることがうわっ!!」
「おず、好き」


 オズを床に押し倒すと、真っ赤になったオズの顔がたくさん見れて、胸がいっぱいになる。
 もっと、みたい。
 やばい、癖になる。


「おずかわいい……すき」
「離れろ離れて本当にやめろ!!」
「おずはわたしすき?」
「今日のお前、本当におかしいって……!」
「すき?」


 アイツの肩を地べたに押し付けて、顔を首辺りにスリスリしてたらうめき声が聞こえた。


「……好きだよ。これで満足だろ」


 顔を手で隠しながら、そう答えたオズに股がりながら、私は満面の笑みを浮かべた。



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