歪んだ愛情
「いだ・・・・・・・・あははっ兄さん今日まだ夜じゃないんだけど」
「うるせぇな、飽きたんだよ。 つまらねーし
ジャックはもういないからな、オレが食っちまったから・・・中身からバリバリと
抵抗してたみたいだけど、元は自分自身の人格だ。勝てるわけないだろ?
・・・そろそろ地下でうっぷん晴らすのにも飽きた。
つまらねぇ、アキタ、もっと、もっともっと
こんなんじゃぁ・・・・・全然楽しくねぇーよ」
「うーん・・・困ったね。 本当に兄さんって僕がイナイとダメだね。
くすくすくす」
「誰がこうしたと思ってるんだよ? 全部全部お前がこうしたんだろ?
アニタを殺して、俺を生かして・・・?満足かよ・・・なぁおい!!」
ガンガンとジャックがオズの頭を柱に打ち付ける。
手にはナイフを握っており、他のメイドや召使はハラハラとみているだけだった。
目の前の光景が信じられなくて目を見開いた。
ジオが父上と叫ぶ。
ジャックの目がジオへと移った。
まるで蛇だ、ジオは蛇に睨まれた蛙のように硬直する。
「お前はいいよな? ちゃんとアニタとそっくりな金髪になったし
目は・・・オズに似ているのはいただけないな」
「な・・・・んのことだ・・・?」
「なぁ・・・・オズ人の妻奪っといて何か言う事ないのかよ?」
ジオの目が見開く。
オズはただ憎たらしげに笑っているだけだ。
「・・・・・まぁ、いいや。 あんな淫乱女別に。誰にだって股広げるもんな?
どうせならぐちゃぐちゃに殺したかった。オレが殺したかったのに!!」
癇癪を起した子供のようにジャックがオズを蹴り上げる。
そんな異質な状況の中私は見ている事しかできなかった。
ジャックが言ってしまった言葉のせいだと思う。
奪っといて・・・?え・・・?
「なら、早く殺したら? 僕が憎いんでしょ兄さん」
ケタケタとケモノみたく口を大きく広げオズが笑っていた。
その言葉でジャックがにやりと笑う。
「ただで殺すわけないだろ? もっとくるんで苦しんで
懇願しないとやだね。 お前のプライドズタズタに切り刻むまでは絶対殺してやんね
夜美を殺せば簡単だと思ってたんだけどな・・・死なないとなると話は別だ。
なぁ怪物ってどうしたら死ぬんだ? 喉を切り裂けばいいのか?
腹をえぐればいいのか? それとも目玉か?
お前の目イライラするんだよ、あいつみたいな金色ですごくムカつく。
偉そうに・・・」
「ジャックやめろ!!」
ジオが叫ぶ。
ジャックが楽しそうに笑った。
時計の針が鳴る。
殺人鬼がくくくっと喉を鳴らして笑う。
そして私の髪を引っ張り顔をあげさせる。
「抵抗したらオズを殺す。 好きなんだろ? ならおとなしく殺されろよ」
目を開き、目に映ったのはオズの驚愕した顔だけだった。
次に目を覚ました時は隣にオズがいた。
「おはよう」
そう言って頭をなでた。
私はまた殺人鬼に殺されたらしい。
じんわりと腹部が痛む。まだ完治できていなかった。
「・・・・最低」
それだけつぶやくとオズはくすくすと普段通りに笑う。
「何が・・・?」
「さすがタラシ人妻にまで手を出したか・・」
「心外だなぁーまだあの時は結婚してなかったから人妻じゃないよ・・・くすくす
嫉妬してるの」
「そういう事じゃなくて!!お前本当最低!!」
「・・・・それに過去のことじゃない」
「・・・・お前・・・!!!」「言っとくけど僕は今まで好きになった女性なんていないよ。 アニタもそう
あいつは兄さんを奪うからいけないんだ」
私が口を開きかけた時鋭い痛みに涙が出そうになる。
ぐちゅりと気持ち悪い音がした。
それがオズの手だとわかり睨んだ。
「で?・・・君僕の事すきなの?」
「はじめっか・・・ら・・・いって・・・!!!」
オズの手は傷口をえぐるように掻きだしていく。
意識が飛びそうになる。
言葉に出すのもつらい。
「本当に・・・?」
「ほ・・・・んどう・・・やめて・・・っ痛い・・・」
ぴたりと手を止め、オズが私を見下していた。
「じゃぁジオに会っていたのは何故?警官の男にもあってたよね?
どうして?僕が好きじゃないの?
好きといいながら他の男と話すの?
朝も兄さんといちゃいちゃいちゃいちゃ・・・・どうしたいの?
僕をどうしたいの・・・・?
変な言葉言ったら殺すよ?」
オズが無言でぺらぺら話す。
腹部の傷口がズキズキと痛みだし、意識がなくなりそう。
汗が大量にふきだす、そんな私をオズは冷たい目でみていた。
好きなのに・・・私にはオズしかいないのに
どうしたら伝わるんだろう。
私バカだからわからないよ・・・・
消えそうになる意識の中、呟いたのは好きという2文字だけだった。
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