嘘と真
聞きたいことがあった。
フィオレと言う人にもう一度会いたい。
会って話をしなければならない。
屋敷から飛び出すとフィオレさんが馬へとまたがっている姿が見えた。
私が大きな声で名前を叫ぶと気づいて、馬へと降りてくれた。
息を切らしながら行くとフィオレさんが先ほどの笑顔とまったく同じ顔で出迎えた。
「どうしましたか? そんなに慌てて・・・あ!もしや私を活用してくれるんですか?
なんでもしますよ!」
「いや・・・・き、ききたいことがあって」
「・・・・はい、なんなりと!」
フィオレはすごくうれしそうだった。
「薬剤師って言ってたよね。・・・・ならこの屋敷の薬ってほとんど」
「はい、主に私が調達して売っているということが多いですね。
ここらでは生えていないものもありますから・・・・それだけですか?
もっときいてもいいんですよ?」
「・・・・ということはオズの右目もあなたが・・・?」
「はい! とはいっても・・・私は薬担当なので縫い付けるとかそういった手術はできないんです。 オズベルト様の右目を拝見しましたが治すということはできませんでした。
つぶれていた眼球を再生ということはできませんからね。
麻酔になる薬を手渡しただけです、あとの事は全部自分でしたみたいですよ」
「どうしてそうなったか理由しらない・・?」
「・・・・・・」
そう聞くとフィオレの口が止まった。
思い出そうとしているらしかった。
そして開いたセリフに私は硬直した。
「兄弟喧嘩ですね」
兄弟喧嘩?
それであぁもなるか?
「・・・・喧嘩していたら目を・・・事故ってこと?」
「いいえ、わざとです」
にっこりとフィオレさんが笑う。
笑う笑う笑った。
能面のように笑った。
「ジャック様が刺したみたいです。 ナイフでオズベルト様の右目を」
ぺらぺらと詳しい情報を吐いてくれた。
思わず耳をふさぎたくない様だった。
あのジャックが?
仲がよさそうなあの2人が?
多少なぐったりしているのを見たことあるけど。
「もちろん殺そうとしたんでしょう。 悔しそうにしていたそうです」
「・・・・本当に?」
「本当ですよ。 嘘をついたって意味がないですから
私は貴方の幸せを願っているんです、嘘をついて悲しませることは一切考えていませんよ。」
ふんわりと笑ったフィオレさんをみて
真実だと悟った。
何が本当で何が嘘かわからなくなっていく。
それくらいあの兄弟は仲睦まじかった。
私が嫉妬するくらいに・・・
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