切り裂き魔
「これで10人目ですって」
「怖いわね」
「しかも相手は女性ばかり・・・おちおち外にも歩けないわ」
「そろそろ帰りましょう。 夜は危険だわ」
街に出向くたび聞く噂は殺人鬼の事ばかり。
さすがに参ってしまう。
警察もピリピリしているようだった。
いたる所に警察官がいた。
女性を見かけるたび何か注意しているようだった。
「帰ろうか」
カインが強く握り返してきてそのまま無言で屋敷へと向かう。
森の中、馬車とか使わなかったので徒歩で歩く。
だんだんと夕日が隠れていき、次第に暗くなっていく。
「大丈夫?疲れたら私がおんぶしてあげる」
「・・・?」
「あ、えっとこっちだとお姫様だっこの背中ver.って言ったらいいのかな」
あれとイタリア語で例えるのが難しい。
でもなんとなくわかったのだろう、カインが青ざめて横にぶんぶんと頭を振っていた。
そんなにいやか・・・私におんぶされるのは。
ちょっとショックだった。
「大丈夫ですか?」
「・・・・・へ?」
途中屋敷に用事があるだろう馬車が来た。
通り過ぎるのを待とうとして木の陰へとどいたら、その馬車が止まり一人の男性が出てくる。
服装からして警察の人みたいだった。
カインがさっと私の陰に隠れる。
「もしかして・・・ヴィンチェンツォの家の関係者ですか?」
「・・・・あ、はい。メイドですけど、こっちが息子です」
そう言うと男はよかったと胸をなでおろした。
道がよくわからなくなって困っていたらしい。
道案内してくださいと頼まれた。
カインが無言で手を強く握る。
「大丈夫、私が守るよ」
そう言うとこくりとうなづいた。
これ以上歩かせるのはカインの体に負担がかかる。
それに本物っぽい気がするし。
もし、誘拐犯とかなら私が殺せばいい。
カインを引き連れて馬車へと乗った。
中にもう一人男性がいて、髭を生やし何か気難しそうな老人だった。
お辞儀をすると顔で合図された。
老人の向かい側の席へと座る。
先ほどの男・・・・20〜25歳くらいだろうか。
優しそうな男性がそっと座ってまた馬車が動き出した。
先ほど簡単にだけど屋敷までの道を教えてからたどり着けるだろう。
そんなことを考えながら窓の風景をみた。
もう外は真っ暗で大きな満月が見えた。
「お嬢さんのお名前は?」
若い男性が話しかける。
「・・・ただのメイドなので」
「あ、すみません。 怪しいモノじゃないんです!警察官であります」
びしっと敬礼をした。
思わず敬礼を返す、するとふにゃりと笑った。
ジオに笑い方似てるな・・・そう思った。
「女性に名前を聞くとは失礼極まりない」
「す、すいません・・・上官」
「あの、警察の方が一体何か・・?」
「あぁ・・・・失礼しました。 えっとこれについてちょっと聞きたいことがありまして」
若い警察官が胸ポケットから1枚の紙を取り出す。
それは新聞の様だった。
「切り裂き・・・・ジャック? 」
新聞にはそう書かれていた。
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