嘘つき
「今は本当に仕事忙しいから夜きなよ。 相手してあげる」
オズにそう言われてウキウキと階段を下りる。
もちろんその後なんなら夜の相手でもいいよと言われて幻滅はしたが・・・
とにかくチェスをしてくれる約束をしてもらった。
「早く夜にならないかな「何がだ?」・・・・わっ」
思いっきりビックリして階段を滑り落ちそうになる後ろから声をかけてきた男性は
びっくりしていたがとっさに私の腕を掴んで持ち上げてくれた。
心臓が激しく鼓動している。
引っ張ってくれた男性をみると私と同じようにびっくりしているジオがいた。
「驚かせないで」
「それはこっちのセリフだ! 楽しそうにしていたから何かあったと聞いてみたら・・・
あぁ、あやうく夜美を殺すところだった」
怪我させなくて安心したのか深いため息をしている。
例え階段から落ちても死なないんだけどな。言いそうになったがここでも怪物扱いされるのは怖い。
オズにはすでにばれているけど
目の前のジオを見ながら思った。
拒絶されたら・・・・・軽く死ねるかもしれない。
「まぁ、無事ならいいんだ。 で?何かいい事あったのか?」
「チェスする約束したんだ」
相手オズだとバレたらきっとジオは激怒するだろう。
あえて相手の名前は言わなかった。
ジオはそうかと楽しそうに笑う。
「私はそういう頭脳ゲーム苦手だからな。 相手カインとかか?」
「・・・まぁそんな感じ?・・・・あ、ジャックもうまいんだよ」
このままだと相手指定されてしまう。
そう思い、とっさにジャックの名前を出した。
すると、ジオの顔が笑顔から無表情へと変わる。
・・・しまった、ジャックもダメだったか。
やらかしたと気づいた時にはすでに遅く。 目の前のジオは今にも死にそうだった。
「・・・・ジャックって父上の兄のジャックか?いやそんなはずないよな
召使のジャックだよな? そっちだよな・・・うむ、ジャックだなんて名前そこ等じゅうにたくさん
あるもんな。そうに決まって「ジオ落ち着いて・・・オズの兄で合ってるよ」
cazzo!」
近くにある柱にむかって頭をぶつけている。
少しでも冷静になろうとしているのか・・・・ジオ血しか流れないよ。
むしろ痛い人だよと声をかける勇気さえでない。
一通り柱に打ち付けて冷静になったのか笑顔でジオが振り向いてきた。
・・・・血だらけ・・・
若干ひきつつ、ハンカチをそっと手渡した。
「・・・すまん、びっくりした」
「私もびっくりしたわ」
「・・・・すまん」
もう一度小さくいい。ハンカチは後で洗って返すと言われた。
「・・・夜美はジャックと仲いいのか?」
少し怯えるように聞く。
私はその意味がわからず小さく縦にうなづいた。
「・・・そうか・・・・・ならまだ会ったことないのか?」
「誰に?」
「・・・・ジャック・・・・」
「?ジャックなら会ってる」
「違う・・・もう一人の・・「ジオ」・・・!!?」
上から声が聞こえ、ジオが上を見上げた。
私とつられて上を見上げる。
オズが冷たく見下ろしていた。
先ほどと違ってすごく冷たい顔だ。
思わず後ずさる。
ジオは声も出せずにただガタガタと震えていた。
「余計な事いうな・・・」
数段低い声が聞こえる。
暫くジオを睨んだかと思ったら次に私を睨んできた。
数秒睨んだかと思うと目をそむける。
「出かけるから」
そう言い残して違う部屋へと歩いて行った。
結局その日の夜は遊んでくれなかった。
チェス盤を持ちただ、部屋の前でただずんでいた。
「嘘つき・・・・」
そう呟いて近くにあったソファーに座りぎゅっとチェス盤を握った。
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