秘密
沢山の洗濯物をもって屋敷の外へと出た。
もちろん洗ってなんていない。匂いに敏感な私だとどうしてもわかってしまうから。
今は洗剤のいい匂いしかしない洗濯物を運んだ。
今日はいい天気でしかも風も強くない、まさに洗濯日和だった。
「・・・・にしてもすごい量だなぁ。 毎回思うけど」
家族、メイド、召使、執事全員の服を洗っているのだ。
何百着の服が一度に外に干される。
これを昼までに終わらせて次はカインの勉強の様子でもみようかな?
そう思っていたら一人の影がすっと見えた。
ジャックだった、あいさつしようとして手が止まった。
・・・あぶない何故かそう思った。
赤い目は数秒こっちを睨むとそのまま奥の方へと歩いて行った。
何故か気になり後を追いかける。
ジャックがいた。
周りがバラの棘で遮られている。
そっとその棘を避けながらそっと近づいた。
バレナイヨウニ。
ばれたら危ない気がした。
ジャックの目線の向こうには一つのお墓があった。
名前はよく読めない・・・あ・・・?なんだろう?
でもこのまま近づくとジャックにバレる可能性がある。
ぐっと堪えた。
ジャックはしゃがんで何かを話しかけているようだった。
それがだんだん嗚咽に変わって、最後には鳴き声しか聞こえない。
「・・・・あっ・・・・」
いたたまれなくなりその場を去った。
ジャックがその場から返ってきたのは私がさってから30分後だった。
先ほど泣いていたとは思えない。
いつものすまし顔をしていた。
そのまま部屋へと入り鍵を掛ける音がする。それっきり今日は出てこなかった。
次の日、ジャックがまたお墓の前に1時間くらいいた。
次の日もお墓の前に1時間くらいいた。
どうやらそれが日課になっているらしい。
気になっているとメイドの一人が話しかけてきた。
「ジャック様はね昔婚約者がいたのよ」
「・・・婚約者・・・」
「でも結婚して次の日に自殺したみたいよ」
こそっと耳元で教えてくれた。
聞いてはいけない気がしたけどもう遅かった。
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