邂逅一番
「平城夜美。特技は壊すこと。好きなことは風来先生のお手伝いです。よろしくお願いします」
私だって、高校一年時代はある。死にたがりを卒業して、こうやってそれなりに人間と共存を努力してみようと試みてみてはじめての年だ。
校庭は桜の色で咲き満ちていた。生徒の気持ちみたいに浮き足立った色だったからか、私もおかしかったのだろう。緊張しまくり動揺しまくりで自己紹介に挑んだ私は初日から完全に浮いてしまっていた。
風来先生が担任で着席を命じられたからか席に座る。そして、先ほどまでの自己紹介で一人引っかかった男の雰囲気を思い出していた。
内容までは思い出せない。ただ、悪意に満ちているというか……。
ふと、自分の斜め後ろから視線を感じて後ろを振り向くと、その張本人がにやにやと笑を浮かべてこちらに顔を向けていた。
たしか、名前はオズベルト・ヴェンチェンツォだ。
「こら平城さん。前を向いてください」
「あ、すっ、すみません!」
男の視線に私はひっかかりをかんじたものの、風来先生に言われたとおりに前を向いた。
その時、私はアイツを殺していたら全部丸く収まったのか。私にはわからない。
▽△
入学したばったりとなると、中学生のグループで行動することが多いだろう。だけど、私は中学の友達さえいない。呆然と周りに固定したグループが生まれていくのをさみしく見ているしかできなかった。
仕方ない。これも、自分のせいなんだ。なにか、変なことをしてしまったんだろう。
そう諦めているものの、私に転機が舞い降りた。席替えというのは、私でももしかしたら友達ができるキッカケになるのかもしれないと思ったからだ。
でも、私は一番後ろでしかも一番窓側。前も横も男だった。そして斜めの女の子はその斜め前の女の子と楽しそうに話している。詰んだ。
がっくりとうなだれるのは仕方ないことで、頬を机につけながら隣をみると、その男がにやにやと私を見ている。
「……何?」
オズベルト・ヴェンチェンツォの嫌な雰囲気に眉をしかめながらそう訊ねると、オズベルト・ヴェンチェンツォは貼り付けたような笑みを浮かべたままはじめて言葉を紡ぎだした。
「入学早々ぼっちとかかわいそうだなって思って」
それは、席替えをしたばかりの賑やかな教室では、私だけにしか届かない言葉だった。
だけど。だからこそ私だけしかその場で動かなかったのだろう。
悪意に満ちた笑みが一層濃く歪む。それと同時に私の腹のそこから足の先まで何かが煮えくり返らず爆発した。
だけど、その言葉事態にキレたわけではない。その言葉もこみで、全て含めて。男の存在が気に入らなくなっただけだ。
ブレザーの中から仕込んでいた木刀を取り出して、オズベルトの居た机を真っ二つに割った。そしてそのまま木刀をオズベルトに向けようとしたが、やりすぎたみたいで木刀が地面に刺さってしまったみたいだ。
「センセー。平城さんが僕をいじめてまーす」
「はっ!?」
「酷いんですよー。入学そうそう、一人なんだって言われちゃいました」
笑ってないくせに、何故かかるく笑ったオズベルトに呆気にとられてしまう。だけど、私は首根っこを誰かに掴まれて、それが誰かわかるもんだから、後ろを振り向くこと事態が恐ろしく思えた。
「平城さん。入学そうそう教室内で暴れるとは、私の話たっぷり聞きたいみたいですね」
「ああああ!! ふっ、風来さん! ご、ごめんなさい……!!」
「……反省しているのはよいですが、貴女は何が悪いか理解してませんからね。それをちゃんと理解できるようにお話させていただきます」
そのまま私は風来さんにつれられている間、オズベルトは私をみて腹を抱えて笑っていた。
そして、私とオズベルトの決定的なようで曖昧な関係が生まれたんだ。
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