俺の周りは変な奴しかいない
学校のチャイムがなり、シバと歩実は急いで学校の中へと入る。
自分たちの教室ではなくその足取りは別棟へと向いていた。
「まったく、毎度毎度・・・・ あの人は」
「まぁまぁ、あいつは絵に集中すると部屋から出てこんしな。
ワシらが呼びにいかないと留年するじゃろ?」
いっその事留年すればいいのに
階段を上りながら彼女はそう思いながらため息をついた。
正直めんどくさい、早く教室に入りたかったがシバが何度も誘うので仕方なくついてきてやった。
ただそれだけ、頭を掻きながら奴がいるであろう美術室の扉を開ける。
部屋は紙とティッシュで溢れかえっていた。
もはやゴミ屋敷、そして床には転々と絵具が付着している。
歩実とシバはそれを払いのけながら寝ている男へと歩みよる。
窓から微かに入る風が彼の髪をゆらゆらと動かす。
太陽の光に反射してまるで黄金のようだった。
シバは絵の下敷きになっている男の三つ編みを引っ張り上げる。
無理矢理起こされた男は痛みに耐えれず声を上げた。
「いだだだだっ!!」
「ほら、しゃきっとせんか。ジオ」
ジオと呼ばれた男は自分の髪をさわりながらジト目でシバをみる。
「この年になって禿るかと思った・・・」
「それくらいじゃぁジオさんは禿ませんよ。「いやいや!本当だぞ!!シバの怪力をなめちゃいかん!!」そんな大げさな」
「今日も元気がいいなぁジオは。」
はははとにこやかに笑うシバに毒が抜けたのかジオもふにゃりと笑う。
その横で歩実が一枚の絵を見ていた。
絵には一面の向日葵畑と青空が描かれている。
「今は春ですよ?」
「あぁ、夏のコンクールに向けての練習なんだ。春のコンクールはもう出展したからな、あとは結果待ち。」
腕を組み、嬉しそうに笑うジオ。
絵を見ているとひとつ疑問が浮かんだ。
向日葵畑の隅っこに子供がいる。
本来、ジオは風景画しか描かない。人物絵を描かないことはシバも歩実も知っていた。
小さいけれどそこに人の絵が描かれている。
好奇心を抑えきれず歩実は聞いてみた。
「あなたが人物を描くなんて珍しいですね」
するとジオはまたふにゃりと笑いこう言った。
「今日は私の従弟が入学する日なんだ」
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