興味
「やぁ、今日も顔隠してるの? ぶっさいくな顔晒したくないのはわかるけどさ」
「げっ! また来たのか!? 帰れ!!」
「えー。まだ僕、君の名前すら教えてもらってないんだけど」
「お前に教える名前なんてない!」
「じゃあ、名前なしでいいのかな?」
「てめぇ……おちょくってんのか……!!」
「え? 気付かなかったの? 空気読めないんだねー」
「こ、んの……!!」
最近、変な男が私の周りをうろつき始めた。
私に興味があるから、近づいたらしい。
おかしいよね。私みたいな化物が気になるなんてさ。
多分、というか、こいつは私が化物だって気づいているくせに。本当に変。
日本では、ちょっとした武家の子だったんだけど、弟が町人を愛してしまったんだ。ただ、その子が遊女になりかけて、弟はその子を攫って、なら海外に逃げますかと私達は海外へ逃げてきた。つては遊女になりかけた子に頼った。
とある領地で穏やかに住めるかと思えば、外人ということで迫害されかけた。そこでキレた父さんがいろいろやらかして、いつの間にか領主になっているし。
私はどうでもいいとそのへんうろうろしていたけれど、このあたりは争いも多くて喧嘩に巻き込まれること、子どもを迫害する人も結構いて、その度に私はそいつらを殺した。次第に、私は悪魔とかサタンとかそんな変な噂がたって、日本同等誰にも近寄られなかった。
なのに、何でお前は近づいてきたんだよ。意味わからないやつ。
「ねぇ。フードとってみたら?」
にやにやしながら、さっきからそればかりをいう男。私なんかの顔を割り出して、どうするつもりだ。耳にタコが生えたみたいにもう、何回も何回もいうもんだから、根負けしてしまった。
「あああ!! もう、わかったから! とればいいんだろ!?」
「そうこなくっちゃ」
男が、私に視線を向けていた。それは、向けられたことのない好奇的なもので、どこかくすぐったい。
らしくもない高揚感に、恐る恐るフードをとって、男を見上げたら、少し呼吸が止まっていた。すぐに、また呼吸しだしたけど、じっとこっちを見ている。そして。
「なんだ。わりと可愛いじゃない」
爆弾宣言した。
「は、はぁあ!? か、かわいって……!」
「あれぇ? 何照れてるの? もしかして、いわれなれ慣れてないとか? 童貞? 君何歳?」
「二十二だ!!」
「は……? ごめん。僕の耳、おかしくなったみたい。どうみたも十くらいにしか見えない女が二十なんて、どんな聞き間違いしたんだろ……」
「間違えてない!! 正確には、二十二だ!!」
「……神がいるとは思えないけど、神様は残酷なことをするね。もしくは、君の両親のヤリ方が普通じゃなかったんじゃ」
「だぁああああ!! 気色の悪いことを言うな!」
「あ、ごっめーん。悪気あるんだ」
「うざい! 殺すぞ!」
「物騒な女はモテないよー」
ケラケラと笑い出す男に、またフードを被る。
何で、こんな心臓がバクバクするんだろう。こんなに、顔が熱いんだろう。
だけど、私の手をとって、男がフードをはずした。
赤くなった頬が、男の視界にはいる。
「だから、はずした方が可愛いって」
掴まれた手首に、真っ直ぐ目を見つめられたことはなくて、それに、褒められたこともなかった。
喧嘩することも、こんなにドキドキすることも、なかった。
ああ、この気持ちは、弟が言っていたものとよく似ている。多分……。
「す、き」
「……は?」
「……はっ、ち、違う! いまの、聞き流して……!」
失態。思ったことを、全部口にし過ぎだ。
男から、離れようとしたら、男は、私の腕を引いて、私は男の胸の中に埋もれていた。
「ねぇ、なら付き合おうよ」
男の言葉は、何か別の意図が含んでいるようだった。
だけど、それでも自分を必要としてくれるなら、それに運命を任せてもいいのかもしれない。
私は静かに頷いて、まだ名もしらない男に身を任せた。
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