ヒロ様とコラボリレー | ナノ


リカイデキマセン


 帰らなくちゃ。帰って、こんな思いからさよならするんだ。
 だけど、目が覚めた時に私が居たのは、見たこともない、冷たい部屋だった。
 ベットが一つしかないことで、ラブホテルを連想してしまう。吐き気がするが、それより遥かに殺伐としていた。
 そんなベットに鎖に手足を繋がれていた。ハッキリ言えば、こんなもの私には通用しない。
 目の前でにこにこしてるオズが心配になってきたからだ。


「……オズ?」
「馴れ馴れしく呼ばないで」
「……うう」
「くすくす。嘘だよ。本当単純でバカだねぇ、夜美は」


 まず、オズは私が辛い気持ちになると喜んだ。
 でも、その原因はオズでないといけない。
 大嫌いって言われて、しばらく泣いて、嘘だよと言い返す。ここで一生過ごしてねと言われて寂しさで泣き出したら本気にしたの? バカじゃないとすごく幸せそうな笑顔でまたくる。
 他の奴に抱かせようかとか言われた時に止めてと懇願した時のオズの笑みは極上のものだったかもしれない。

 帰りたい。
 どうせ、私はオズの手駒なんだ。
 変えのできる、おもちゃなんだ。
 だけど、何でなんだろう。
 ここ監禁される前に、オズが言っていた言葉が引っ掛かる。


「オズ」
「何?」
「私なんて、手駒……なんだよね」
「うん。気づかなかったの? 夜美以外でも遊べるし、思い上がりいも程があるよ」


 血の気の退いたような感覚。
 また、目に涙がたまっていってしまう。
 オズはそんな私に組み敷いて、涙を舐めるようにキスをした。


「ははっ。ねぇどこまで単純なの? 学習しないの? これも嘘に決まってるじゃない」
「う、そ……?」
「うん。嘘だよ」
「嘘だ」


 私が、そういったら始めてオズの顔から不気味な笑顔が消えて、真顔になった。
そして、射抜くような視線で私を見下す。


「……何でそう言うの?」
「だって、ぱーてぃのとき、お前、女抱いてたもん。私なんて、どうでもいいんでしょ?」
「……ああ、妬いたの?」
「妬いてないぃ……もう、やだ。どうせおまえもわたしをすてるんだろ……」
「途中まではしたけど、最後まではしてないけど」
「途中でも一緒だ!!」
「くすくす。こんな顔みれるなら、またしてもいいかなー…」


 オズが私の頬をゆっくりとなぞっていく。
 もう、私にはオズがわからない。
 そして、オズはそのまま私の後頭部に手をはわせて、私を抱き締めて耳元で囁く。


「僕をおかしくさせたのは、君だよ」
「……は?」
「何をしてても君が僕の邪魔をする。だから、こうした。それだけのことだ。だからこそ、君の代わりはいない」


 オズは、どんな時代でもはぐらかす。そして、私が理解できないような言葉で私を惑わせた。
 もう、うんざりだ。
 それに、お前は人間なんだからな。


「お前は、私を捨てる」
「捨てないよ」
「いいや、絶対。だって、お前は人間だから」
「……?」
「お前は死ぬ。消えてしまうものは、いやだ。私は、ずっと消えない絆がほしい。どんな歪でも、狂ってても、私の時代のオズは、私の望みを叶えてくれた……だから、」
「ああ、そっか。君は未来から来たんだっけ?で、死人しか興味ないってこと? 死体愛好者? うわ趣味わる!」
「そういう意味じゃな、」
「つまり、僕に死ねって言ってるの? 夜美のために? ごめんだね! 夜美のためなんかに死にたくない」


 ああ、気持ち悪い。
 オズは、何がしたいんだ。
 私は、駒なのか、駒でないのか。
 必要でないのか必要なのか。
 ハッキリしてほしい。


「……用事ができた。いいこでお留守番しているんだよ」


 そう、私の頭を撫でて、オズは部屋を出ていく。
暗い闇に残された私は、悟る。
 駒でもなんでもいい。結局のところ、私にはオズしかいないんだ。
 気持ち悪くても、そばで私をみて、からかってくれたオズが好きなんだ。
 だけどそれは、私を絶対に捨てない未来のオズであって、この時代のオズではない。

 手足の鎖を破壊して、私はその闇から逃げ去った。



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