ダマリナサイ
ジオと仲直りしてから、リサさんの塔で談笑させてもらった。リサさんはこのあたりでは吸血鬼と噂されているらしい。だけど、人外の気配は全くしなくて、首を傾げたら、吸血病という血を欲してしまう病気なんだって。
「私の血は飲めるのならたくさんあげるけど・・・・・・」
「流石に本物の化物の血を貰うほど勇気はない」
「私のをあげるぞ!」
「今日はもらったから、また今度もらうことにする」
リサさんは淡々というか、なんというか結構さっぱりした人だ。表情らしいものも私にはわからない。ジオには多少わかるのかな? なんか、小さい頃からの付き合いらしいし。
そんなリサさんが淹れてくれたお茶をすすりながら、ジオの最近の話に耳を傾けていた。概ね、私の教えた遊びについてだけど。あと、未来の話も時空を曲げない程度には話した。
そんな時、ジオが思い出したように今後の予定を口にした。
「ぱーてぃ」
「貴族の親睦会みたいなものだ! どんな料理がでるのか今から楽しみだな!」
「お前は本当に、飯と女と絵しか興味がないな」
「大丈夫だ! 家族や友達も入っている!」
リサさんがやれやれと肩をすくめている様子に私は少し笑ってしまう。
そして、楽しい時間はすぐに終わりを告げ、私だけ先に帰らなくちゃいけなくなった。どうやら、ジオはここに泊まっていくらしい。
「夜美」
リサさんが手招きして私を呼んでいたから、すぐに駆け寄って行ったら、耳元でこんなことを囁いてきた。
「パーティでは、気をつけて」
「・・・・・・?」
「あー! 夜美ずるいぞ! リサ! 私にも内緒話をしてくれ」
「お前に隠すほどのことではないが、単純だからな。この話を聞いて、知らん顔できるか?」
「・・・・・・知らん顔?」
「その情報を知らないふりすることだ。あと、少しでも態度にだしたらいけない」
「・・・・・・多分無理だ」
しゅんとしたジオ。でもそこがいいところなんじゃないかなってつぶやいたら、すぐに機嫌を直した。本当に単純らしい。
そのままリサさんやジオとバイバイして、私は屋敷へと戻る。
リサさんの言っていた意味はなんだろうか。でも、何となく予想はついた。これが野生の勘だったとしたら、ますます化物染みてきたなと自嘲してしまう。
きっと、何者かがオズ、もしくは屋敷の人物を狙っているんだろう。それだけはさせない。どんな手を使っても、あの人たちは傷つけたりしない。
そう決意しながらも、オズの夜ご飯のメニューを考えながら屋敷に戻り、オズの部屋へとむかった。まず、なにを食べたいか聞かないとね。
そして、オズの部屋の前にたどり着いて、ノックをした。そして返答を貰ってから、仲にはいる。
「ねぇ、今日のご飯何がいい?」
「・・・・・・昼間にドアを投げつけた化物が、なんで何事もなかったみたいに話しかけるのか・・・・・・」
オズがこちらに振り向いて、ひくひくと口角を釣り上げながらこちらに近づいてくると、急に動きが止まった。おそるおそる顔を覗きこむと、オズの目には、私も映っていない。
「何、してたの?」
「え・・・・・・」
「さっきまで、どこで何をしてたの?」
何も宿さない黄緑色の瞳に、目を丸めた私が映った。
オズさんはジオが大嫌いだから、それを怒っているんだろうか。でも、それさえ許されなかったら、ちゃんと愛してもらわないといけないということになる。だって、愛してもくれないのに、全部捨てるなんて、値が合わない。
オズは私の腕を掴んで、ベットに放り投げた。よくあることなんだけど、今日はいつもよりさらに暴力的で、すぐに私の上にのっかっては、服をびりびりに引き裂いてる。
「ち、」
「黙りなよ。あのメイドがくる」
口を手で覆って、オズは私を睨みつけた。
私が、一体何したっていうんだ。目を白黒とさせて、状況が追いついていないのに、オズは続ける。
「これ、アイツの臭いだよね。しかもさ、男の臭いまでしてるんだよ。もしかして、ヤッたの?」
「ち、ちが」
「もういい。それならそれで、僕にだって考えがある」
ぐいっと無理やり足を開かされて、その間に入ってきたオズ。
すごく嫌な予感がした。今までのがおふざけに見えるくらい。今のオズは本気だし、なにより怖い。
オズから離れようとしても、どうやらびびって腰が抜けたみたいだ。嘘だろ。これでも元兵士、というか暗殺者だぞ。
「や、やだ。やめて。違う。ジオとそんなことしてな」
「アイツの名前を口にするな」
そのまま口を塞いだオズを止めることはできない。
怖いけど、私も拒否することができない。
私は、そのままオズに無理やり抱かれた。
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