開校一番
高校の入学式。
幼稚園から中学校までの進学とは違う。
学力やそれぞれの夢に合った高校を選び、合格しなければ通えない受験戦争を乗り越えなければならない。
そして、本日は風遊高校に合格した者達の入学式だった。
希望を胸に高校生活を送ろうとする生徒達を歓迎するかの様に、桃色の花びらが敷き詰め合うように咲き乱れていた。
「がはっ!」
「ちょ、たんごぶ!!」
「す、すんません! 調子こきましっ、い、いやだ! 死にたくねえ゛っええ!!」
桜に囲まれた風遊高校のグラウンドで、濃い赤が散開していた。
銀のアクセサリーを身につけた大の男二人、三人と地面に転がる。
ある者は、身体中が斬りつけられ。
ある者は、頭に大きなコブを携え。
ある者は、口から血を吐き、白眼を向いていた。
そんな男達を踏みつけ、まだ立ち続けているがらの悪い不良を睨み付ける少女。
「私の」
炭の様な色のポニーテールが、風でゆらゆら揺れる。
青白い肌に、十六夜月のような形の黒い瞳が、男達の動きを封じていた。
「弟の晴れ舞台を邪魔しやがって……」
ゆっくり少女が、男達と距離を縮める。
少女の背には、濃い目の茶色の髪の長身の男が冷めた目線で少女や男達を見下ろしていた。
「ぶち殺す」
少女が死刑宣告をした同時刻。
「沙弥、大丈夫か?」
「大丈夫。先輩の言うことももっともだしね……」
『ふみゅー! にゅっうがくしきっ! 楽しみやわぁー!』
「……くれぐれも、学校で話しかけないでね」
「陸。ちゃんとハンカチとティッシュは持った?」
「うっせーー!! テメェにどうこう命令されたくねーんですよ! だいたい俺は学校なんかムグッ!!」
「強制登校を実行します」
「あらあら。夜美ちゃんまた暴れているんですか? 元気で嬉しいです」
「そんな流暢なこと言ってる場合か!! 望月! 風来をつれて止めろ!」
「……俺は、売られた喧嘩を買うことは悪いことは思わないが」
「だーー!! 風紀委員なんだからさっさと行け!!」
「ふふ。今度はどーしよっかな……」
「えろい同級生とかいてえろハプニングとかねーかなぁー。なぁ、後藤!」
「無知、転換、異常(知るか。それよりあれ、凄いぞ)」
「朝からスクープです。桃山さん。行きましょう」
「おーけい! リップ塗ったらすぐ行くよ!!」
「……騒がしい……ですね……」
「風来せんせー落ち着いてください! 職員会議ですよ!!」
「しかし夜美が! あのおバカがまた暴れてるんです! 俺が止めないと!」
「大丈夫ダヨ。我の占いによると、あと三分で相手方が全滅するカラ!」
「それではいけません!」
「あのバケモノ、貴方の親戚でしょう? 止めてきなさい」
「大丈夫じゃろ! ワシ、今からジオとメシ食うから! あ、中原も来るか?」
「(あのバケモノ利用できないでしょうか)」
それぞれの思惑が行き交う中、青春時代が始まろうとしている。
「クスクスクス。
楽しい楽しい高校生活の始まりだね」
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