ヘンタイデスネ
オズの身の回りの世話事態は大変ではない。オズの意地悪が大変なんだ。
仕事量が一気に増えて、朝早くに起きて、書斎の本を一つ一つ乾いた雑巾でホコリをはらっていく。これがなかなか大変な作業だった。三日間くらいでとりあえず全部はらって、床を雑巾で拭いたり、換気したり。オズが起きる一時間前の作業はここで終わる。
次にオズの料理だけど、飲み物は水か牛乳しか認めていなかった。どうせ毒だなんだとかいってるんだろう。この件については怪しいと思ったら私が食べると約束させた。
朝からきついものは食べないだろう。だけど、ちょっと珍しいものを食べていい気持ちになってもらったらと、フレンチトーストとサラダのセットに不似合いな茶碗蒸しを作ってみた。
調理しながら片付けもしているから、ちょうどいい時間帯になる。おぼんに料理をのせた私は、そのまま廊下にでて、階段をゆっくり登っていった。そして、一番上の、さらに奥の部屋に辿りついたら三回ノックして、勝手に中にはいる。
最初の関門は、オズを無事に起こすこと。
「うわ。またぐっすりだ・・・・・・」
ベットの脇におぼんをおいて、オズの顔を覗き込む。
まめに若返りの薬を飲んでるのか、体は少年のままだった。だからか、寝顔はあどけなくて、・・・・・・可愛らしい。
起きたら、憎たらしいのにね。やっぱり、寝顔って起きてる時と全然違うな。
そう考えながら、どうオズを起こそうかと首をひねらせた。
前は叩き起こしたらもっと静かにしろって言われたし、かといって凝視して待ってたら起こせよって言われたし。オズが提案した起こし方は卑猥すぎて実行できない。
・・・・・・よし、今日はこうしよう。
意気込んだ私はオズのベットに乗っかかった。ぎしぎしときしむベット。そして、オズにまたがって、おでこを合わせた。おおおおお、これ、やばい。かなりやばい。
「お、オズ・・・・・・起きなきゃ、ちゅー・・・・・・するよ?」
ああ、久しぶりに名前呼んだなって感動してたら、黄緑色の瞳からじとりとした視線が私に向けられていれ、恥ずかしくって後ずさってしまった。
「朝から盛ってるね」
「な、なな。お、お前が前にお前の○○○を○○○して起こせっていったから、それから下品さをひいてしたんでしょ!」
「・・・・・・意外に、卑猥なことをはっきり言うね。慣れてるのか慣れてないのかはっきりしてよ」
「な、なれないよ! い、今でも心臓バクバクしてるんだから!」
「・・・・・・はぁ。後これ、食べたら運んでいいから。ごみ捨てだけ行ってきて」
「う、うん」
オズに言われた通り、ゴミを回収して部屋から出ていった。
何時もなら挑発してくるのに、変なオズ。
それから、午前中に廊下とかの掃除を終わらせる。掃除や料理作るしか出来ないのは、洗濯をしたくないから。一度、未来(私の現代)で洗ったことはある。匂いに敏感な私は我慢出来なくて小一時間嗅いで服を抱き締めてた。もうあんな惨めな思いはしたくないから、こっちではツバキさん達に任せていた。
自分勝手だなぁと苦笑しながら、窓を拭いてたらお尻に何かがあたった。
「ひあっ!?」
「感度は良いんだね」
「おおおお、オズ!?」
振り向く前に、後ろから抱き締められた。腰に右腕を回されて、オズの左手は太ももを触ってる。そして、私の右肩に顎を乗せて、耳に囁く。
「ね。したいでしょ?」
勘弁してほしい。
歯をくいしばって、身体を小さくさせて拒否反応を示すも、それじゃ誘ってるみたいだよとからかわれて耳を舐められ始めた。
恥ずかしい。だけど、辛い。
こんなことを他の女にもしてるんだと思うと胸がポッカリ空いたようだ。
「や、やだぁ……」
「だから、それじゃ煽ってるだけだっ」
「こんのド変態がぁあああああああ!!」
何時もギリギリになると、ツバキさんがオズを蹴るか殴るかで私を助けてくれた。
私を抱き締めながらツバキさんはゴミを見るような目でオズを見下してる。
最近、オズはそれが嬉しいみたいで目を輝かせてる。
「その目に理不尽な暴力! 君が兄さんの顔で男なら良かったのに! ああそうだ、カインがいるじゃない。君とカインなら、兄さんにそっくりな子になるかもしれない!」
「キモいッス」
「あああああ!! 最高だよ! その暴言も変な語尾がなければ兄さんそのものだ!!」
そして、兄さん信者のオズを見て私がツバキさんから離れ、ドアをもぎとりオズに投げつけた。
「あがっ!」
「こんの……バカオズがぁああああああああああ!! 兄さん兄さん言いやがってぇえええええええ!! うわぁああああああああん!!」
「や、夜美!!」
ツバキさんの呼び掛けを無視して、私はその場から逃げ出す。
アイツの中に私が居ないことなんて、わかってるんだ。だけど、期待してしまう。
切望してしまう。絶望してしまう。
大好きだから、見てほしいんだよ。
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