ヒロ様とコラボリレー | ナノ


シンパイデス

「夜―美―ちゃああん!」
「ひゃあああ!?」
「はぁはぁ、可愛いっす。ロリメイド・・・・・・!」
「だ、だから私はロリじゃな」
「ぷにぷに気持ちい・・・・・・!」
「・・・・・・はぁ」


 私もロリやショタが好きだから、ツバキさんの反応と似通ったことを無自覚にしているのかもしれない。気を付けよう。
 比較的、身長が高いツバキさんに後ろから抱きしめられていた。私はというと、カインさんに許可を貰ってスープを作っていた。


「そういや、ここらで最近熊が出たらしいっすよ! 夜美は特別気をつけてくださいっす!」
「あはは・・・・・・ありがとう」


 昨日、私が人を殺した件は熊が殺ったことになっていた。まぁ、何時も殺人方法が人間ではありえないような方法ばっかりだったからな。
 ツバキさんは、その熊が私だと知ったらやっぱり私を否定するんだろうなと少し寂しい気持ちになってしまう。
 お皿にスープと焼いたパン、あと水をおぼんに乗せたら、ツバキさんは不思議そうに首をかしげていた。


「それにしても、夜美が料理を作るって珍しいっすね。てっきり自分が食べるものかと・・・・・・ジオ様にこき使われているなら、ツバキが注意してもいいっすが」
「いや、ジオさんは関係ないよ。大丈夫だから」


 ツバキさんに誤魔化しながら、逃げるようにキッチンから離れていく。そして、階段を駆け上がり、更に奥の部屋へと向かって、部屋の前で三回、ノックした。


「・・・・・・開いてるよ。入れば?」


 そう返されて、部屋の中に入るとそこそこの広さの空間があった。窮屈しないくらいのスペースには本とかが沢山あって、机には紙とペンが散乱していた。
 部屋をまじまじと観察してる私に視線を向けるのは、ベットの上で上半身だけ起こして本を読んでいるオズの姿。前より体が縮んでいているところをみると、多分若返りの薬を飲んだんだろう。本当、そんなものどうやって作ったんだか。

 肩に包帯を巻いたオズに近づいて、側にあった机におぼんを置いた。


「ねぇ、本読まずに寝ときなよ。怪我は治したとしても、怪我治す為の熱はあるし、体力消耗してるから体を休めたほうが・・・・・・」
「黙って。僕は忙しんだ」


 本から私に視線を移すことなく、やつはそう吐き捨てた。イラってくるのは私が短気だからか、当たり前のことなのか。
 本を奪うと、オズはこちらを睨みつけた。こっちを見て欲しいとは思うけど、なんで何時も望んでいない視線を向けられなければならないんだ。


「寝て」
「・・・・・・メイドの分際で、この屋敷の主に歯向かうの?」
「今の主はカインさんって聞いた」
「・・・・・・はっ。君みたいな化物を雇うなんて、やっぱり完全には兄さんじゃないんだね。それとも、君が騙しているのかな?」


 それに、オズには私が化物だってバレているらしい。まぁ、一日で銃の怪我事態はほぼ完治させたからな。・・・・・・唾液のチカラで。
 兄さんというアイツのフレーズに胸がツキンと痛むけど、やっぱり命を狙われて死にかけたのは事実だ。オズの寝ているベットの隣にある椅子に腰掛けて、両手を組んだ。


「とにかく、もう病状を悪化させたくない。おとなしく寝て。私が気に入らないなら、治ってから追い出せばいいから」
「・・・・・・本当、意味わからない。化物と人間ってこんなに違いがあるのかな。それとも、化物の中でも君が格別なの?」
「元は人間だ・・・・・・それに、人間の感性は多少理解して、」
「ははっ! 君が人間? それじゃあ尚更狂ってるね! 人間一人殺して僕の手当とか、普通できないよ」


 手を握る力が強くなる。オズが言うとおり、私は狂っているんだろうね。
 皆、私なんかと違う生き物なんだ。そして、世界に私は一人ぼっち。
 寂しくて、苦しくて、辛くて、切ない。


「あと、これなに?」
「あ・・・・・・食べ物。お腹減ると思ったから」


 オズがベットの脇に置いてるおぼんに視線を移したから、そう答えた。だけど、オズはバカバカしいと言いたげに鼻で笑う。


「毒を仕込んで殺すつもり? なるほど。それなら僕に近づいた目的がわかるよ。動揺させて、隙をつくるつもりだったんだね。人を殺しても罪悪感を感じないで、僕に手料理をふるまって看病するなんて正気の沙汰じゃないしね!」


 ケラケラと嘲笑うオズに、私は動きが止まった。そんなつもりはないのに、全てが裏目に出てしまう。
 どうしたら、信じてくれるんだろうか。どうしたら、私はオズを殺すとこができないと理解してもらえるんだろうか。
 喉まで湧き上がるしょっぱい液体を飲み込み、おぼんに視線を移したら、いいことを思いついた。水が入っているグラスを手にして、オズの目の前で口に含む。


「? 何して・・・・・・」


 そのまま、オズの唇を塞いだ。オズの口の中に私の口の中から流れた水が流れて、オズの喉仏を鳴らす。ぼたぼたと私とオズの口から水がこぼれて、シーツを汚した。
 そのまま唇を離して、パンも食べようとしたら、珍しいくらい顔が真っ赤なオズに手を掴まれた。


「何、しようとしてるの?」
「パンを噛もうとしてる」
「まさかと思うけど、それ僕に食べさせる気?」
「うん」
「汚っ! 何考えてるの!? バカじゃないの!? もう化物って頭もいかれてるの!?」
「毒はいってない」
「だからってそこまでしないだろ!」
「食べなかったら、死ぬ」
「だ・・・・・・だぁあああ! もう面倒くさいな! 食べるよ! 食べたらいいんだろ!」


 私の持っていたパンとおぼんごとふんだくって、オズはパンにかぶりついた。
 その様子が、なんだか可愛くって、心が満たされて、思わず頬が緩む。

 オズは、スープの一滴、パンの欠片一つ残さず食べてくれた。 


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