ヒロ様とコラボリレー | ナノ


ツタエタイデス

 きっと、罵倒されるだろうな。
 きっと、拒否されるんだろうな。
 何回死んでも何回殺しても、それ以上に辛い気持ちになるんだろうな。
 だけど、構わない。
 これが、きっと一番正しい答えだから。

 三回、オズの部屋の扉をノックした。
 怖い、怖い怖い。胸が押しつぶされそうだ。
 ぎゅっと拳を胸の前で握り、待っていた。
 扉が開く気配はない。

 一時間経った。
 また、三回ノックする。
 恐怖に殺されそうだ。自分が自分でいなくなりそうだ。
 震える体を抱きしめるように、待っている。
 扉が開く気配はない。

 六時間経った。
 また、三回ノックする。
 ぐるぐる思考が混ざったようだ。気持ち悪い、吐きそうだ。
 乾いた笑いが漏れそうになる。止まらない涙が流れ続いた。
 そして、やっと部屋の中で足音がする。
 だけど、扉が開く気配はない。


「何してるの」


 部屋の中から、大好きな声が聞こえる。
 嗚咽が止められないて、だけど答えを一生懸命絞りだした。


「殴って、ごめん」
「・・・・・・それ言うためにそこにいるの? バカじゃない。時間の無駄だよ」
「オズ、」
「気安く呼ばないで、さっさと帰りなよ」


 冷たい否定に、私は涙ごと飲み込む。
 まだダメだ。まだ、向き合ってない。
 まだ、ちゃんと誤解を解いてない。
 

「お願い、聞いて」
「・・・・・・聞くわけないだろ。そこに、一生いたら?」


 また足音が離れていく。
 私はそっと扉に手を当てて、枯れない涙を流し続けた。
 私はそれくらいのことをしたんだろう。それさえ気づけていない私は異常なんだね。反省すら形でしかできてないんだろう。
 だけど、やっぱり伝えたいことはたくさんあるんだ。時間だって、たくさんある。それに。
 扉越しでも、近くにいることを許されたのが嬉しくて、ずっと扉の前で立っていた。

 ツバキさんが私のためにご飯を持ってきてくれた。だけど、私は化物だから食事は必要じゃない。それに手間になるからもういいよと言っておいた。
 ジオさんが来て、もう降りてきてと言ってきた。私はオズから離れたくなくて、やっぱり誤解も解きたくて断った。
 リズやレンが他の遊びを訊ねにきた。私は遊べないから縄跳びを口頭で教えてあげた。外からはしゃいだ二人の声が耳にはいるあたり、ちゃんと遊べているらしい。

 限界を超えると、怖いも苦しいもない。
 なんだか、今の状況が幸せにさえ感じてきた。
 扉に頭を当てると、体のバランスが崩れた。
 床にこけてしまったらしい。扉は開いていて、オズが呆れた様子で私を見下ろしていた。


「・・・・・・しつこいんだけど。一日も扉の前で何してるの」
「お、・・・・・・」


 名前、言ったらダメなんだ。じゃあ、どうしよう。
 オズの顔をみると、思考がまたぐちゃぐちゃになってきて、とにかく誤解をとかなきゃと自棄になってしまった。


「あ、あの。違うの」
「はぁ? 何が」
「大嫌いじゃない」
「・・・・・・まさか、死ねっていいに来たの? 本当に暇だよ、」
「違う、大好きなの」


 オズの動きが固まった。
 私は起き上がることもなく、顔だけあげて口を動かしていく。
 伝えたいことを、全部伝えていく。


「大嫌いなのは、確かに言ったけど、それは他の女の子抱いてるって聞いて、八つ当たりだった。本当にごめん。私が耐えればいい話なんだけど、最近あえなくて、ぴりぴりしてた。本当は、お・・・・・・アンタの顔見れて本当に安心した。怖かった。あんたに嫌われたんじゃないかった。嫌われてるかもしれないけど、もう会えないのは、辛い。苦しい。気がおかしくなる。よかった。あえて、うれしい。あの、本当にすきなの。だから、あえて、本当にしあわ、」


 言葉を適当に並べただけだ。気持ちをあふれさせただけだった。
 だけどオズは私の腕を引っ張って、ベットに押さえつけた。呆気にとられる私の首筋にオズは噛み付く。


「ぎゃあ!」
「うるさい」
「や、やだやだ!」
「・・・・・・僕が好きなんじゃないの?」


 顔をこちらにむけようとしないオズが、そのまま腰を撫でるあたりで羞恥心が限界を突破した。膝でお腹を蹴ってしまい、オズが呻く。


「ち、ちが、ごめ・・・・・・」
「ごほっ・・・・・・!」


 顔を真っ赤にしたオズがこちらを睨む。今腹を蹴ったからだろうか。
 なにを言えばいいのかわからなくて、私は後ずさりしながら、部屋の入口に逃げていった。


「ご、ごめん。だけど、それは、恥ずかしいからやだ!」


 そのまま部屋に背を向けて逃げてしまった。
 いうことは言ったけど、やっぱり肌を重ねることはなれない。恥ずかしい。
 真っ赤になった顔を隠すことなく階段を下りていき、ジオと通りすぎた。

 ああ、もうこんな顔誰にも見せたくない。


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