ヒロ様とコラボリレー | ナノ


モウイイカイ?


「ジオ、何で一番上の階に行っちゃダメなの?」
「ダメなものはダメだ! 夜美は知らなくてもいい。それより、今日も遊ぼう! 前、夜美が教えてくれたカクレンボがしたい!」


 ジオはアホ毛をフラフラと揺らし、目を爛々とさせて私に遊ぼうと何時も誘ってくる。
 ジオに敬語や様呼びはやめてくれと言われてわかるように、結構フランクな人なんだろう。だけど、どうやら二股してるとか、それだけじゃなくて女に誘われたら断らないとか噂も流れている。人は見かけによらないんだなって再確認させたれた。
 ジオに気に入られた(いかがわしい意味は何もない)私。理由は未来、といっても日本には昔からあるような遊びを教えていったらジオが興味を示したからだ。


「日本はいいところだな。私も行ってみたい」
「・・・・・・今は、江戸くらいかな」
「ん?」
「いや、別の話」


 私の存在する時代より遥かに昔だ。人間として生きていた時代からも、かなり昔。
 それを言ったら、この屋敷の人達は私をどう思うんだろうか。
 いや、それ以前の問題だね。
 私が破壊神と名だけの化物だと知ったら、きっと怖がるんだろうな。

 きっと上手くは笑えてない。だけど、ジオの誘いにのろうとしたら、ホールの廊下から、二つの小さな頭が飛び出した。私がそっちに顔を向けていると、ジオさんもそちらに顔を向ける。ジオはその二人を知っているようで、満面の笑みを浮かべて二人に手招きする。


「リズ! レン! そんな所に隠れていないでこちらに来い! 一緒に遊ぼう!」


 ジオの呼びかけに、二人は顔をだし、そしてこちらに近づいてくる。
 一人はカインさんに似た小さな男の子だった。黒い髪に、私と同じ色の目をしている。もう一人は男の子の瞳の色の髪をした女の子がいた。ただ、彼女の目には生気が宿ってない。


「また来ていたのかよ。最近よく来るな」
「ここは私の帰る家だからな!」
「よく言うぜ。昨日もどっかの女の家に泊まってたんだろ」
「遊ぶより仕事したほうがいいと思う」


 どうやら皆、ジオの女たらしで遊人の気質が好きではないみたいだ。
 しょんぼりとしたジオさんに、男の子と女の子は私に顔を向ける。
 子どもは好きだ。理由は私を怖がらない子どもがいたから。だけど、彼女も通り魔かなにかに殺されてしまった。きっと、私のせいなんだろう。
 この時代には、私の悪名がないから、被害はないと思う。だけど、自分のせいで大好きな子どもが傷ついてしまうんじゃないかと、目線を宙で泳がせてしまった。


「お前、ツバキの言ってた夜美か?」
「う、うん」
「ツバキのやつ、毎日毎日ロリがロリがって言ってるから、あってもないのに名前覚えちまったじゃねーか。あれ、どうにかなんねーのか」
「それは・・・・・・うーん。大丈夫。私はこう見えて結構高齢だから」
「お父様と一緒・・・・・・」


 うん。きっと君のお父さんより高齢だよという答えは流石に飲み込んだ。百歳超は流石に化物扱いされる。
 私は生き物の雰囲気とか読み取る子どもや動物にも避けられているけれど、二人は私を怖がる様子も見せずに、ただ観察していた。それが、すこしくすぐったくて、思わず笑みを浮かべてしまう。


「何で笑ってんだよ、変な奴」
「・・・・・・変」
「ううん。嬉しいんだ」
「はぁ?」
「それより、君達はジオ・・・・・・ああ、君たちはカインさんの・・・・・・敬語は必要ですか?」
「いらね」
「うん」
「よかった。じゃあ、ジオに用事かな?」
「父様が呼んでる・・・・・・」
「やだ、行かない!」


 カインさんがジオを呼ぶときなんて、きっと仕事関係だろう。だけど、この遊人は仕事をしたくないニート体質なようで、腕を組んで拒否を体現していたら、女の子が地面をけって、ジオに飛びかかり、首に腕を巻きつけた。


「・・・・・・父様を困らせないで」
「は、はい」


 女の子がジオから離れたら、ジオはロボットの様に体を動かしてホールから消えていった。あの女の子の身のこなしは殺し屋に、しかも優秀な部類にはいれるレベルだ。将来有望だな。
 女の子が男の子に駆け寄り、二人は私を見上げていた。八歳くらいだと私のほうが身長が高い。流石に見下ろすのは威圧的かと二人に目線を合わせて私は口を開いた。


「かくれんぼ、する?」
「何だそれ」
「・・・・・・?」
「私は東の国に生まれてね、そこの遊びなんだ。探す人が一人と、その人に見つからないように隠れる。そんなゲームだよ」
「東・・・・・・ツバキの生まれた国かもな」


 男の子――リズがすこし目を細めて、東の国、つまり日本にすこし興味がわいたようでかくれんぼをしてみたいと答えた。女の子――レンもこくんと頷く。


「じゃあ、誰が鬼しようか」
「鬼?」
「探す人のことだよ。じゃあ、じゃんけ・・・・・・あはは、これも日本独自の遊びだね」


 私は手を二人の前にだして、拳を作った。そしてそれをぐーだと言い、次に手を広げてパーの形にする。そして親指、薬指、小指を折り曲げて、ちょきを見せて説明した。


「グーは石で、パーは紙、チョキは・・・・・・刃物だよ。石は刃物を壊せるから、石の勝ち、パーは紙だから、石を包める。だからパーの勝ち、刃物は紙を切れるから、刃物が強い。ここまでわかる?」
「当たり前だろ」
「・・・・・・うん」


 結構理解力は長けているみたいだ。
 そして、同じタイミングで三種類のどれかをだす、それで勝つか負けるかのゲームだというと、リズとレンは二人でしばらくぎこちないじゃんけんをしていたが、時期に慣れてきたのか、じゃんけんで白熱していた。
 私はじゃんけんなんか、手段だったから、新鮮な気持ちになれる。
 二人はすっかり、日本の遊びに夢中なようでかくれんぼもしたいと口にした。


「じゃあ、最初に、見つかった人が次の鬼ね」
「この屋敷のことならなんだって知ってんだ! 夜美に見つけられるわけねーよ」
「あ、言ったね。野生の動物と同レベルの感性だと讃えられた夜美様が見つけられないものなんてないよ!」
「・・・・・・それ、褒められてんのか?」
「う。と、とにかく二人は隠れて!」


 私は目を隠して、数を数え始めた。二人の足音は戸惑うようにわたわたしていたものから、どどどと駆け足でその場から何処かへ駆けていく音に変化する。
 ふふ、私は聴覚もいいんだ。すぐに見つけてやる。
 暗闇の中、数を数えていると目に焼き付いたように浮かび上がったのはオズの姿。
 結局、彼は見つかっていない。
 足音も、声も、考えさえも読めないんだ。私でも見つからないよ。
 見つけたいよ、ねぇ。出てきてよ。
 かくれんぼは、疲れたよ。


「・・・・・・もーいいかい?」


 そう口にすると、返事はない。
 さて、と私は立ち上がり、明るく、鮮明になった視界で屋敷をあちこち探索し始めた。
 さっさと見つければいいはずだ。
 だけど、オズの影が私を邪魔する。
 ふと、階段の目の前で立ち止まってしまい、あいつは高い所によくいたなぁと思い出した。
 ジオに言われたことを忘れて、私は階段を登っていく。

 リズや、レンは上にいるのかな?
 オズも、上にいるのかな?

 最後の段を踏み終え、あたりを見渡した。
 二階と廊下から見たら大して変わりはしない。
 だけど、近くのドアを開ければ、本だらけだったりと下よりは変わった作りのようだった。
 ふらふらと奥へ奥へ進んでいく。
 そして、一番突き当たりの扉の前に立ち、その扉を開こうとしたら、勝手に扉が開いた。
 中から現れたのは、期待していた彼だけど、その彼より大人びていて、なにより実態化していた。
 そして。


「・・・・・・誰?」


 時間軸の絶望を、私にもたらす。



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