鬼と鬼神
突如悲鳴を上げて廊下へと走りだした真 也を3人は茫然と見つめていた。
「アイツどこ行く気してんの?…… もう すぐ入学式始まるって言うのに」
「さぁ? あらかた、初恋の相手が男 だったという勘違いが発生したんじゃな いのかな?」
「そんなアホな話あるか!!」
「あの、先生方来てるからそろそろ並ん だ方がいいよ」
先ほどの男子生徒がそう言った。 唯は男子生徒の方を見つめ、首をひね る。
制服についているプレートに疑問がわい たからだ。 この学校はマンモス校で生徒が沢山い る。先生方が覚えやすいようにと左の上 ポケットに小さく フルネーム付のプレートを付けているの だ。 男子生徒の名前は 田村 沙弥 男子にさやなんて可愛らしい名前など付 けるだろうか?
「いや、今どきだったらありだな。女 性っぽい名前の男子」
「…… は?」
「いや、なんでもない。 あんた何組? 私A組なんだけど」
「・・・・・・ A組だけど」
「あ”ぁあああああああああああああ?! なんで僕が唯ちゃんと一緒じゃないの に 沙弥が唯ちゃんと一緒なおぉおおお?」
「ひいっ…… 顔近っ・・・・・・ 怖 い」 「うっせぇええよ、市ノ瀬死ね!!」
市ノ瀬が睨みかえすと沙弥は小さく悲鳴 を上げる。 市ノ瀬の顔が怖かったからと唯の死ねの 言葉と同時にこぶしが市ノ瀬へと繰り出 されたからだ。
彼女は少し呻いて、床へとへたり込ん だ。 沙弥が心配して顔を覗き込 む・・・・・・ 「唯ちゃんS顔最高」 心配するだけ無駄だった。
「はっ…… まじで死んでくれないかな。 お前うざいんですけど」
「こらそこ!何暴力沙汰起こしているん ですか!!」
「やべっ先公だ!! ・・・・・・ じゃぁあと沙弥よろしく!!」
「は?! ちょっ待って!! 」
風来先生が怒りながらこっちに向かって くる。 それを一目散に気づいた唯は2人を置いて 窓から逃げ出した。 気づけば市ノ瀬もいなくなっており、沙 弥だけがぽつんと立っていた。
そして肩にぽんと手がおかれる。
「・・・・・・・ なんですか?」
「さっきの生徒のこと詳しく聞かせてく れますか? 」
その時の風来先生の顔はとても怖かった と後に沙弥は語るのだった。
prev / next