路線変更したヒーロー
※注意
■ネタバレ設定あり
■自殺未遂ネタあり
■捏造設定あり
以上大丈夫な方どうぞ
「青ちゃん。自殺したって聞いた?」
「うそ!? あの白い髪の子よね!? でも死んだって校内連絡なかったよ?」
「未遂なのよ。奇跡的に命は助かったんだって」
「よ、よかったー。嫌だよね、母校で自殺者が出るなんて……でも、なんでまた」
「何かいじめられてたらしいよ」
「ええ!? みた感じ何時も笑顔だったのに! 何より田村君の彼女でしょ!? それだけで私、明日も生きていけるよ!!」
「実は、田村君が好きな誰かが青ちゃんをいじめたんだって」
「女の嫉妬かぁ。醜いなぁ……その点私はファンとしてのマナーはわきまえてるよ!」
「本当、田村君大好きねぇ」
「だって、陸上部のエースで優しくてフェミニストで、時々強引な所がしびれるっていうか!!」
「本当、同性とは思えないわよね。あれじゃ彼氏できないわ」
「? なっちゃんの名字は木村でしょ?」
「……あ、そういえば。噂なんだけど……隣のクラスの大蔵さんがね」
▽△
「さ、クロ。怒ってる……?」
「当たり前だ。いじめられてるなら何で私に相談しないんだよ。こんなこと出来ないようにしてあげようか?」
「ひゅみぃっ! 堪忍な!」
合掌をして笑いながら謝るアオ。だけど、何故かアオに対して苛立たなくて、ただ呆れるしかできなかった。
「何がともあれ、生きていてくれたらいい。それに、私がアオを追い詰めたようなもんなんだから」
「えっ……そ、そんなことはないよ……」
少し、アオの目が泳いだ。
秒針が動く隙もなく、私はアオを押し倒した。目を大きく開くアオを、私は見おろしていた。
「何を隠してる」
「え」
「アオは何も苦しまなくていい。私に任せてくれたらいい。もう怖い思いも絶対させない。私が、アオを守る」
私のせいで苦しませるか。
私のせいで泣かせてたまるか。
大切な存在を守れなくて、何が親友だ。次は絶対に守って見せる。
「……言えないなら、いいや。驚かせちゃったね。ごめん」
アオからのいて、少し頭を撫でた後にパイプイスに乗せたカバンを手に取った。
「あ、クロ」
「ん、なに?」
「そういえば、陸上はどうしたん……?」
アオの伸ばした手が、赤い瞳が震えていた。何故か、心中は穏やかで、笑えた。
「アオの気にすることじゃないよ」
「……クロ!」
そのまま、私は病室を後にした。鍵を閉めることも忘れずに。
アオは扉が閉まっていても支障はないだろう。あの部屋はアオの家族が用意した生きることに差し支えないくらい必需品が揃った病室。合鍵は私と、扉の前に立っているアオのボディガードしか持っていない。つくづく彼女が金持ちでよかったと痛感できる。
アオの親友は、友達は私だけでいい。関わるのも私だけでいいんだから。
「沙弥っ。ハァ、ハァ……ここにいた……」
「守口先輩。どうしたんスか」
目が隠れるくらい前髪は伸びてて、黒渕メガネをかけてる守口先輩は息をきらしていた。私が中学に入った時から何かとお世話になってる。
あと、私の憧れの先輩でもある。
「青空ちゃん……大丈夫なのかい?」
「まぁ……二度と歩けないらしいですけど、対して問題じゃないでしょう」
「え、問題じゃ……ない? でも、歩けないって……」
「? 無駄に歩かれたら刺されるかもしれないじゃないですか」
アオにふらふらされては私の目に入らない。なら、これでいい。好都合だ。
先輩は、汗だくの顔を少しそでで拭って私に語りかける。
「実はね、青空ちゃんの件なんだけど……いじめの首謀者が大蔵さんって噂で……」
「大蔵?」
先輩の口から大蔵という名前が浮かび上がってきた。確か、よく私の練習を見に来た派手な女の子の名字だ。
そうか、アイツが。
「でも、まだ噂だから確証はないんだけどね……」
「関係ないスよ」
「……沙弥?」
「火の無い所に煙は立たない……なら」
アオだけは、守らなきゃいけないんだ。
私が、大切な親友を救わなければならない。
「……大蔵なら簡単ですね」
「何が簡単なの?」
「いや、独り言ッス。情報ありがとうございました。私はちょっと失礼しますね」
先輩に背を向けて、私は走り出した。まずは証言者と証拠集めだ。アオに近付けないような弱味を握ってやる。
部屋の鍵を握りしめて、私は前へ走り続けた。
end
――後書き
沙弥は受けのヤンデレでもありますが、今回は攻めのヤンデレというリクエストで書かせていただきました! 沙弥はヤンデレには見えませんが、本編でもある種歪んだ性格なんですよ。今回は守るためならなんだってするヤンデレを書いてみました。使命感を改悪しました。少しでも楽しめたらと思います
リクエストありがとうございました!!
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