頂き物語 | ナノ


鳥籠の中の君





とある田舎のとある屋敷、私は立って いました。 周りは木で囲まれており、わずかな日 の光によりなんとか屋敷と断定できる そんな場所に私はいました。 門を掻い潜り、使用人たちを素通りし 地下にいる彼のもとへと歩いた。

「やぁ、阿弥央久しぶり」

金髪の翡翠色をした25,6歳くらい の男性が笑いかけながら言った。 久しぶり?あぁ、そうでした私の時の 感覚と人間だった彼の感覚とでは多少 のズレがあるんでしたね。 たった数十年あってないだけで久しぶ りとは・・・本当人間って短命です ね。 クスリと笑いながら彼・・・ジオさん のもとへと歩み寄る。

「お久しぶりです、ジオさん。どうで すか霊体の方は慣れました?」

「うーん、ま多少わな!いかんいつも のくせで人に話しかけてしまうことが あるが それ以外は慣れたな。」

「そうですか・・・」

そう、ここにいるのは生前人間だった もの。 数十年前に亡くなって未だ現世をさま よっている悪霊だ。 生前に縁があったので死んだ後こうし てたまに遊びにきたりしている。 意外性があったから、ただそれだけで す。

ふと、彼の手に持っているものを見 る。 筆だ。手にはパレットを持っており、 紙に絵を描いているようだった。

「絵ですか、ジオさんもそういった感 性を持っているんですね。」

「私は絵と食事と・・・あと女かしか 興味対象がなかったからな。 死んだ後もこうしてたまに描いてる。 」

筆を動かし丁寧に色を塗っていく。 本来霊体というものは物を持つという ことができないはずなのに それは彼がどんどん化け物になって いっている症状だと思い 声をだして笑いそうになるのを唾を飲 み込んで耐えた。

どういった気分なんでしょうか? 人間が化け物になる・・・・可笑しい ですね。 ジオさんならなぁなぁで済ましそうで すが

「阿弥央っなんだよ。笑うなら堂々と 笑え!」

私が堪えているのに不満を持ったのか 彼が頬を膨らませながら怒っている。 男性なのに顔が童顔だからだろうか多 少可愛くみえる。

「ところでジオさんその絵は一体誰な んですか?」

彼の口が開く前に私から質問した。 すると彼はやっと気づいたかと言わん ばかりの顔でため息をついた。

「目の前にいるだろう?私の息子だ」

「おや、失礼。顔が見えなかったので 誰だかわかりませんでした。」

そう言ってジオさんの目線をたどって いくと一人の男性が椅子に腰かけてい た。 体のガタイといい骨格や喉仏などから して青年、いや中年の年齢だろう。 黒のスーツに黒のマント黒の手袋、す べてが黒で統一されている。 全身が黒いためかわずかにみえる肌が よりいっそう白くみえる。

そしてなぜ私がそう言ったのかという と彼には顔がなかったからだ。 詳しくいうと口元から上がない。 クレヨンで真っ黒くつぶしたかのよう な感じで 私の視力でも顔が見えないのだ。

「カインだ。可愛いだろう?」

「見るところによるとジオさんよりも 年上に見えますが・・・「親子に年上 も年下もあるか!子供だったらなんで も可愛いぞ!」・・・そんなもんです かね?」

「お前もシバと一緒で誰かと恋でもす ればいずれわかる!」

「一生わからなくて結構です。」

ガシャンガシャンと鎖を引き千切ろう とカインと言われる男が懸命に腕を動 かす。 しかし、椅子に固定された体と自由に 動かせない手足のせいかうまくいかな い。

「カインもうすぐ終わるから静かにし ろ。見つけた時からあぁなんだ」 そう言って困ったように笑うジオさ ん。

「あれ、見たところによると霊体です よね?なぜ鎖で縛ってるんですか?」

「私の父の趣味だな。あの機械は幽霊 や人間、妖怪なんかを捕まえるための 拷問器具らしい。」

よく見るとカインの手首足首から微々 だが血が滴り落ちている。 いや、霊体なのだから血という概念は ないのだろうけど・・・

「よしできた!!」

バンと筆を置き、らんらんと輝かせる 彼。 そこには一人の男の絵があった。 黒髪の赤目をした優しそうな男性の絵 だ。

「・・・・うまいですね」

自然と口がそう呟いた。 動物の直感なんでしょうか?ゾクリと 何かがざわめくそんな絵だった。

「人物絵は好きだ。まるでその人を手 に入れたような錯覚に陥るからな。」

あぁ、だからそうなのか。 ジオさんの絵は生きているように見え るのは 恐怖、焦り、苛立ちカインさんの心情 が描かれているような絵だった。

「私、カインさんの顔がよく見えない のであれですがジオさんの絵によって だいたいのイメージがつきました。」

「そうかそうか!次会ったら写真みる か?可愛いんだぞ!リズのも見る か?!」

「いや、遠慮しと「よし、絵描いたら 腹減った!飯食いに行くぞ飯!!」ジ オさんあなた 幽霊だって自覚あります?」

「腹減ったものは減った。町にいこう 私の生前のおすすめの店があるんだい くぞ」

背中を押されて、私はジオの歩けのサ インの通りに前へと歩いた。 ちらりと後ろをみる。

「・・・・あわれですね。」

成仏も出来ない、動けない、顔も忘れ て、声もでない。 私はカインさんをさげすんだ目で見つ めた。

(君もね・・・)

すると、頭の中から知らない男性の声 が聞こえた・・・。




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