サボり
洋side
オレの名前は藤野洋、学生である。
5時間目が始まろうという時に麻生君がいないことに気づいたオレは休み時間を
削って麻生君を探しにいくことにした。
「麻生くーん。」
ミーンミーンと蝉が鳴き、子供たちは公園で水遊びをしている。
上着を脱ぎ軽くネクタイを緩めた。
時間的にもう学校に戻っても怒られるだけだ、そう思い真宮に携帯で連絡しといた。
「あ、っちぃー・・・」
頬につたう汗を手でぬぐい。頭にタオルを乗せる。
途中コンビニでも寄ろうかと思ったがあいにく財布は教室に置いてきていた。
コンビニでただ涼みにいくだけという案もあるがあいにくオレにはそんな芸当なんてできなかった。
オレは前までアルバイトでコンビニ店員をしていた。
だからこそわかる!何も買わずにただずむ客のうっとうしいのなんのって!!
あきらかに邪魔視線を送ってもガン無視される悲しさ。
そして「オレは客だ、神様だ」と言わんばかりのオーラを放つ親父、おばさん。
・・・それでいくどもなく挫折しかかったこと数回。
「はー・・・神社にいけば日陰もあるし。もしかしたらオカルト関係で麻生君がいるかも」
そう思い、オレは熱中症で倒れそうな体を起こし足を上げた。
**
階段をゆっくり上り歩いていく。幸い、暑苦しい原因である蝉の声はまったく聞こえず
木の揺れる音だけがあたり全体を覆っていた。
木の日陰で神社の姿はよく見えず、複数の地蔵が静かにたたずんでいる。
「お、藤野。来たのか!「来たのかじゃないよ!!授業始まるよ?」
まぁまぁ座れって」
頂上につくやいなや麻生君と出会った。
彼は神社のど真ん中にまた意味不明な魔方陣を書き終えた所で満足そうにうなずいていた。
そして彼の隣にもう一人いた。
制服からして他校の生徒だろう。彼もまた麻生君と同じでサボってきたのだろうか?
このくそ暑い中悠然と立っておりまるで周りを受け付けないそんなイメージがあった。
「・・・で?この人だれ?」
「お前覚えてないのかよ。前にあったことあるだろ?」
「・・・・前に・・・・」
「学校サボってまで僕を呼びつけた理由って彼?
なら僕は帰らせてもらう」
くるりと後ろを向き階段へと彼は歩きだす。
その瞬間青白い女の子が見えた、目はウサギの目のように赤い。
彼女はオレの目を見た。
勘違いとかではなくオレを見た。
ごめんねと意思表示をするかのようにぺこりとお辞儀をして
いそいで彼の後を追っていった。
オレはそれをただ茫然とみるしかなかった。
肩を掴まれニヤニヤと麻生君が訪ねる。
「なぁ、何がみえた?」
「別に・・・・何も?」
目を泳がせ、麻生君から目をそらす。
そんなオレをおかしそうに麻生君は笑うのだった。
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