ギャップは魅力の一つです
豊木高校の生徒会長である鬼村碧は、その日の放課後、ふらりと本屋に立ち寄った。
そこで、目の前にいる真面目そうな女子に目が止まる。
特徴的な厚い眼鏡に、黒髪を三つ編みにしている。
鬼村はそんな彼女を見て、女子とはやはりこうあるべきだ、と思った。
勘違いされているかもしれないが鬼村は女子全般が嫌いな訳ではない。
ギャル系の女子が苦手なだけで、実際、生徒会の女子とは普通に会話もしている(……といっても、話す内容は業務連絡なのだが)。
うちの高校の女子もこういう真面目な女子が増えればいいのだが、と思ったところで、その真面目女子に声をかけられた。
「……あなた、生徒会の人なんですか」
「え?えぇ、まぁ……」
何故わかったんだ、とぎょっとしたが、なるほど、生徒会の腕章を取り忘れている。
「ちなみに、役職は?」
「……会長ですが」
「会長!!キタコレ!ちなみに副会長は男の人ですか!?」
「まぁ……そうですね」
何でこんなことを聞かれるのか、と思うと、その真面目そうな女子はわなわなと身を震わせながら鬼村の肩に掴みかかった。
「じゃああれですよね!?会長さんはやっぱり攻めですよね!?いや、でも会長さんショタっぽいし誘い受けでもありかな!?ありですよね!会長という上の立場を利用して副会長を拘束して、放課後は毎日生徒会室で二人だけで秘密の会議を開くんですよね!?うひゃああああナニソレ萌える!!!!」
「え……あの……?」
「そこに現れるイケメン書記!強気な書記に急に弱気になって、抵抗むなしく書記と副会長二人に○○○されてそのまま○○○○で○○○○○で!!!あぁおいしい!おいしいよぉぉぉ!!!」
何やらよくわからない単語を叫びながら、その女子は肩から手を離した。
言っている意味はわからなかったが、本能が逃げろと言っている。
欲しかった本は買えてないが、今は逃げることを優先しようと思った。
幸い、その女子は興奮しきっていてが周りが見えていない。
鬼村はその隙に、駆け足で本屋を後にした。
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