頂き物語 | ナノ


破壊神と執事



「いやーもう本当トウマくんったら!!」
「お世辞じゃないですよ、奥さまはすごくきれいです」

はい、おまけね。これおばちゃんとの秘密ね。
と言って野菜をいくつかおまけしてもらった・・・・今日ラッキーですね。

有名スーパーよりは八百屋とかの方が何かと便利だ。
おだてておいてなにかとほめると何かものをくれる。
本当、便利です。おばさまありがとうございます。
礼をして買い物袋を持って店を出た。

「あとは……あぁ、坊ちゃんがケーキ作るとかほざいていたので材料調達ですね。
本当めんどくさい」

今回はバイクとか車は使わず徒歩にした。
なんとなく歩きたい気分だったし、人と多少会話しても邪魔にはならないだろう。
店で買った、たい焼きを頬張りながら歩く。

しっぽまであんこが入っていてなかなかうまい。
イタリアではこんなお菓子なんてなかったから……いや時代か
自由に食べることができるのはうれしかった。

「……唐辛子はいっていたらまたおいしいんですけど」

最近辛味がついた料理にはまり毎日食べているがそろそろ坊ちゃんの目が
鋭くなってきたからやめよう。

ぽつぽつと雨が降ってきて、自前の傘を広げる。
真っ黒い執事服と同じ真っ黒い傘だった。
金属の部分も黒は珍しいと思う。
そう思いながらとぼとぼ歩いていると、河原の方に何かをみつけた。

真っ黒い何かがうずくまっている。
それが大量の鴉だと知ってげんなりした。

「……ゴミでもあるんですかね?」

そして少し血の匂いがして、好奇心から河原の大量の鴉がいる所へと近づいた。
最近の鴉は人が近づいても逃げ出さない。
頭がいいからか傘で振り払うとバサバサと大量の鴉が飛び交う。
カーカーと鳴く様はまるで獲物を横取りしやがってと怒り狂っているようにもみえる。

そして真っ黒い塊がいなくなって僕が見たのはひとりの人間だった。
死体だったら警察に連絡そして逃亡。
赤の他人だったら、警察に連絡して放置。
そう、考えていたのだが。
目の前の人間は僕のよく知っている人物だった。

真っ黒い髪と対照的にしろい肌がみえる。
袴が食いちぎられたようにボロボロだった。
そして、大量の血が流れておりまさに死体その者。

そっち近づき、胸に耳を当てた。案の定心臓は停止しており、死んでいた。

「……めんどくさっ」

あぁ、近づかなければよかったと後悔した。
でも見つけてしまったものは仕方がない。

ガンガンと頭を叩いてみた。

「夜美お嬢様〜お昼です。 お寝坊さんですね起きてくださーい」

「……。」

起きない。
まぁ、死んでるから当たり前か。
顎に手をやり悩む。
こいつをどうしようか?
無理矢理やったら起きるだろうか?
あぁ、きっと悲鳴をあげるだろうね、それも楽しそうだ。
それともいっそのことナイフで切り刻むか?
僕のこと殺したいくらい嫌いなら僕が殺し返したって別にいいよね?
命狙われているわけだしこっちは。

「でも……殺さないよね。 隙作ってあげてるのに
怖い? そんなわけないね、化け物だもんあいつ。 ありえないね
殺したいに決まってる」

そう呟くと夜美の体がビクンと大きく跳ねた。
生き返った?そう思ったら思いっきりゲホゲホと咳き込み吐血した。
河原の石が真っ赤に染まる。
これ、真也がみたら人格変わるね。たしか血を見ると変貌するって聞いたし。
そんなのんきなことを考えているとガタガタと寒いのか震えている。

一体いつからいたんだろう?
この姿を見られたくないから? 誰に?
あぁ、マンションの奴ら。別にもう嫌われたっていいと思うんだけど。
怪物なんてあそこにありのようにわらわらいるし。

「……ズ……オズ」

ふいに呼ばれ、目が見開く。
安定剤かのように僕の名前をずっとつぶやいている。

「おず、おず・・・オっ」

「うるさい……」

倒れている腕を無理やりひっぱり抱き上げ口をふさいだ。
口の中は血でいっぱいで鉄分と甘い味がする。
一瞬夜美は抵抗したが、慣れたのかあっちから舌を入れてきたので
無理やり引きはがした。
赤い唾液が見える。

「お前起きてるだろ……」

イライラしながら睨んだら、夜美はぼうっと僕をみていた。
寝ぼけているのかそれとも生き返って意識がないのか。
そのうつろな目が僕を見る。
金色の瞳がトウマじゃなくて僕をみているようでイライラが募る。

「お嬢様・・・!!は や く お目覚めください!!」

「う・・・にゃぁ〜」

肩を揺さぶりガタガタと揺らす。変な声をあげながらふにゃりと笑っていた。
ド変態か、こいつは。


「起きろ!!」

思いっきり腹を蹴り上げたら。小さく呻いた

・・・・あ、やりすぎた。
まぁでも大丈夫破壊神だから大丈夫。
うずくまっている夜美を放置して川の水でハンカチを濡らして夜美にあてがる。
白いハンカチはすぐに真っ赤に染まり、それでも体に付着した血は取れなかった。

携帯が鳴る。
着信はアルベルトから

僕は深いため息をついて携帯の電源を切った。

「今回きりですよ」

もう聞こえないだろう夜美に囁き、羽織っていた燕尾服を脱ぎ夜美の体に巻きつけ
抱き上げた。
こうでもしないと今の夜美は露出狂と言われてもおかしくない恰好だったから。

「これ、僕が不審者で捕まるってパターンじゃないですよね?
その時はこいつどうしてくれよう」

そう言ってニヤニヤと笑う。
時計をみると2時40分……平城の家まで約10分
そして坊ちゃんの約束の時間は3時ぎりぎり間に合うかどうかの時間だった。

傘もささずに駆け出した。
次の日風邪をひいたのはまた別の話



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