赤い涙、僕の筆跡
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カリカリとペンを動かす音がする。 ここはどこだ?私はどうしてここにいる?真っ暗な部屋の中 うずくまって考えた。 視界が悪く蝋燭の炎だけがゆらゆらと揺れている。 逃げようとも考えたけれど、どうしてか逃げれない。 鎖につながれた腕を見ながら懸命に外そうと試みる。 しかしどうやっても私の力でもこの鎖は外せなかった。
「やっ・・・だっ帰るっ・・・」
不安と焦りのせいかイライラと恐怖で頭が壊れてしまいそう だった。 なぜだかわからないけれどこの部屋は嫌だ嫌だ嫌だ。 気持ち悪い気持ち悪い 血とペンキのにおいと湿気ともういろんな匂いがして眩暈が する。 なんだろうここにいちゃだめだ。壊れる
「家に帰して」 「うーん、何か違うな?君らしくない。泣き出しちゃう君な んて君じゃないなぁ もっと狂気的にしよう。うーん これはどうかな?君は鎖を引き千切り僕に襲い掛かるそして 殺すんだ」 男がいいながらペンを進めると同時に体が勝手に動き出し た。
「なっ!?」
先ほどまでびくりともしなかった鎖が簡単に取れた。 そして私の意志とは違って襲い掛かる。 どうしてどうしてどうして? 体が勝手に動くの!?
「いっつぅ・・・あはは、よく出来ました。」
苦痛そうに顔が歪み男はそういい私の頭を優しく撫でた。 ぞくりと寒気がする。気づけば私の手にはナイフが握りしめ られている。
「私に何をした・・・?」 混乱と怒りで我を忘れそうになる私をよそに男が笑った。 「さぁ?なんでしょう。くすくすくす案外洗脳かもしれない ね? でもさ、今君の意志なんて関係なくない? この部屋から出る方法は僕を殺して部屋からでるしかないと 思うんだ。 因みに鍵は僕の腹の中にあるよ。殺してえぐりださないとこ の部屋から一生でれないよ。 くすくすくす」 「私を閉じ込めて何がしたいの!?」 「だってこのお話は君が主役なんだもの。君に頑張ってもら わなくっちゃ 今日何の日かわかる?わかるよね?君の誕生日。 おめでとう誕生日おめでとうくすくすくす」 男の笑い声が頭の中をよぎる。 なんだこいつは、気持ち悪い。 なんで私の誕生日を知っているんだ?だってこいつはつい さっき会ったばっかりだろ? こいつは私の何を知っている?私の何を知らない? 緋色の瞳が私を捕える、すべて見透かされているようで吐き 気がした。
「ねぇねぇ刺さないの?待ってるんだけど」 「っつ・・・近づくな変態っ!!」 ナイフを握っている手を握り、気持ち悪い笑顔で語りかける 男。 とっさに払いのけ後ずさる。 こいつは危険だ。あんなにも死にたがっていたのに今じゃあ どうやってこの男から逃げようかで頭がいっぱいになってい る。あれおかしいな?何かが変だ。
「何・・・?人間っぽくこわがっちゃって。君化け物なんで しょう? だったら化け物らしく殺せばいいじゃない」 「私は化け物なんかじゃないっ!!」 「化け物だよ。・・・鏡をよく見てごらん? 殺したくてうずうずしてるって顔してる。」
後ろにある鏡をみて恐怖で青ざめた。
「なっ・・・え・・!?・・・・どうして」
鏡には私と同じ顔をした少女が楽しそうに笑っていたのだ。 違うっ私はっ・・・・私はっ
「化け物なんかじゃないっ!!」
叫び声、絶叫、歓喜、欲望すべてをぶつけるかのように叫ん だ。 気がつけばナイフは真っ赤に染まっており一人の男が絶命し ていた・・・。
赤い涙、僕の筆跡 (これはとんだ茶番劇だ。拍手の中誰かが言った)
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