頂き物語 | ナノ


赤い涙、僕の筆跡


あの時は・・・ どうすれば死ぬのか?そればかり考えていた。 学校から飛び降りたり、腹に包丁を刺したり、毒物を飲み込 んで死のうとした。

ごほごほと咳き込む、喉が焼けるように痛い。 体中の骨が折れている感覚がする、でも次第にその感覚もな くなり 出血は止まり骨も再生している。

どんどん私は化け物になっていったんだ。 誰にも止められず、自分でも止まらない。 とにかく死ぬことだけを考えてついには戦地へと駆け出し た。

人の悲鳴、人だったもの、跡地、放射能。 気が狂っていきそうな中私は戦った。

いや寧ろ殺されに行った。けど結果は同じで結局私は死にた がりのままだった。 まだ化け物のままだった。

涙は枯れ果て、気が付けば金色の瞳が人の恐怖を映し出す。 笑えば、獣のようだった。

そんな中私は一人の青年と出会う。

「ねぇ、君すごくきれいだね?」

ナンパか?私の外見を見れば綺麗というよりは可愛いという 人がほとんどだろう。 悪くいけば小学生と視える私の外見をみて綺麗だなんていう 人はほとんどいなかった。 無視して通りすぎようとしたが、顔をみた瞬間息が止まっ た。

動物の直感?化け物の直感とにかく私の体の器官全部が悲鳴 をあげているように ぞくぞくと寒気がした。 黒髪の三つ編みに翡翠色の瞳、顔はどこか幼くけれど大人の ようないやらしい 微笑みをしていた。

私が何も発しないのがむかついたのか、男がこちらへと向 かってくる。 頬を掴まれぐいっと無理やり男の方へと顔を向けさせられ た。

「僕、視えてるんでしょ?君に向かっていったのにどうして 無視するの?」

「あ・・・・へ・・・?」

「母親から習わなかった?人の目をみて話しなさいって? それとも僕の顔が怖いの?僕の背後に何か視えた? 皆そうやって僕を怖がるんだよね。兄さんだけだった僕を見 てくれたのは 兄さんだけ僕を愛してくれたんだ。ねぇ僕の目をみてちゃん と話聞いてよ。」

「・・・・っ!?」

何だこいつ。 とっさに手を払いのけ距離を離す。 手はじっとりと汗を掻いており、時々眩暈や頭痛が脳裏をよ ぎる。 何か知らないけどあの男の話を聞いていると嫌な感じがす る。

「ちぇーっガードきついなぁ・・・。最近の女の子ってみん なそうなの?」

「近づくな、殺すぞ。」

殺気を込め目で人を殺せるんじゃないかってくらい睨んだ。 すると男は二パッと笑い手をあげ、歩みを止めた。

「そう言わないでよ。僕は君と話がしたくて わざわざ下から来たのに」

「・・・・下・・・?」

「君死にたがっているんでしょう?だったら僕が願いを叶え てあげるよ。 なぁに、体が死なないんだったら 精神を崩壊させればいいんだから。 そうだなぁ・・・メジャーと言えば君の大切な人を殺すと か? 良心が痛むだろうね?でもさ別にいいんじゃないの。 君が死ねるためにやったって言えば親も喜ぶと思うし。 あ、それとも弟の方がいい? やっぱり姉弟だもんね。一番身近な人がいいかなぁ?」

「なっ!?真也をどうするつもりだ!」

「真也くんって言うんだ。どうしよっかな?君がしたいよう に僕が叶えてあげる。体の判別がないくらいめちゃくちゃに しようか? それとも目だけくりぬいて一生目が見えないようにする? それとも監禁しちゃおっか? 手足を切って君から一生逃げないよ?どう、どう名案で しょ?」

気が付いたら私は叫び、持っていた木刀を男の首に向けてい た。 彼は抵抗をせず、まるで私の反応を見ているみたいに傍観し ていた。

「視てるよ」 ぐもった声でそう言った。 ビクリと反応して男を見る。

「僕ね、作家なんだ。有名ではないんだけど 今までいろんな話を書いてきた。ジオ、カイン、リズ、トウ マ、ジルダ、クリス。 そして今はアルベルトの話を書いてるんだ。 あの子の話はね、血が足りないといつも思ってたんだ。 そしたら目の前に血に飢えている君をみつけたんだ。 こりゃぁラッキーだと思ってね。話しかけたんだよ、うん! 正解だった。 楽しい、もっと君が狂った顔が見てみたい。面白いねぇ、 もっと悲痛な顔をして? もっと僕を楽しませてよ」

「こんのっキチガイがっ!!」

怒りに身を任せ木刀を腹めがけ押し当てた。 ごふっと呻き、血を吐いている。 気づけば木刀は腹を貫通していた。

「あーっ痛ってぇえええええっ・・・・っふふっ」 にやりと笑い木刀を握りしめこう言った。

「でも捕まえた」 血がついている手で私の頬をなで嬉しそうにつぶやく。 私の瞳に映っているのは人じゃなかった。 それを今やっと悟った。自分以外の化け物に会うのは初めて だった。 「あ・・・あ?」

「ほらこっち、おいで」 金縛りのように動かない体は彼によって引き寄せられた。 いや引き摺られたといった方が適切かもしれない。 襟を掴まれずるずると地面を這う。 どうしよう、逃げ出したいのにどうして体が動かないん だ?!

「手加減してくれたっていいのに君ひどいねぇ? 僕が幽霊じゃなかったら死んでるよ? それとも殺したかった?くすくすくす 今日はいい素材手に入ったから書庫に戻って早く書かなく ちゃ。 おいで早く急がないと朝になっちゃう」

くすくすと笑いながら男と少女は消えてなくなった。



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