※アウターサイエンスのネタバレ妄想小咄。
セトカノではないと思われます。死ねた、かな。
その日、メカクシ団に新しい団員が増えた。
セトの背中に隠れながらびくびくと震える小さな女の子に手を広げながら笑いかける。彼女はひぃ、とセトに強くしがみつく。セトは苦笑いを浮かべながら過度の人見知りなのだと謝った。
気にしないで、と返し、彼女の目線に合わせる。彼女はふいっと視線を逸らし、目を伏せた。これはなかなか筋金入りのセトだね(死語)。
「はじめまして」
「……ぁ、ぅっ」
「はじめまして?」
「は、はじまっ……あぅうっ」
「うん、よろしく。僕はカノっていうんだ。名前を聞いてもいいかな?」
「……ぁ、……ぅ、あ……ま、まりぃ……」
「マリー? 可愛い名前だね。道理でセトが君のことを自慢してくるわけだ」
「ぶっ!? か、かのっ!?」
「え、ええっじじじ、じまんっ!?」
二人して顔を真っ赤にして狼狽える姿は一見の価値有りといったところか。
これからが楽しみだと笑うカノの頭を、肩を震わせたキドが叩いた。解せぬ。
「あーそんなこともあったッスねぇ」
某ビルの屋上で双眼鏡を懐に仕舞いながらセトは感慨深そうに言った。カノがモモのCDを渡すとセトはそれを片手に手摺に寄りかかる。
横ではマリーが当時を思い出したのか、ああううと謎の奇声を発する。
「カノは基本的に変わらないッスよね」
「そりゃあね、そんなキャラじゃないし」
「あ、でも初めて会ったときは無愛想で目付き悪いし無視するしで怖かった気がするッス」
「セトは逆によなよなしててすぐに泣くし女っぽくて気持ち悪かったけどね」
「酷い! まさか無視してたのって!?」
「実はキドとは普通に話してた」
「う、嘘ッスよね!?」
「さあて、昔のことだからどうだか」
はぐらかすように肩を落とすとセトは本当に泣き出しそうな顔で見てくる。こういうところは変わってないなぁ。
目を細めながらセトから視線を外すとマリーが咎めるような目で此方を見ていた。僕はセトに気付かれないようにマリーに黙っているように告げた。
セトは当時のことを思い返すように頭を抱えていて気付く様子もない。大きな緑色の背中が丸くなっていくのをくすりと笑うと反対側でマリーも微笑んでいた。
君だけを無視するだなんて、そんなことあるわけないのに。
「キドッ!!」
華奢なキドの身体が黒いそいつに吹き飛ばされるのは時間の問題だった。
キサラギちゃんを巻き込みながら二人は転がっていく。真っ赤な鮮血がキドの口から溢れ、白い肌を染める。そいつはキドを吹き飛ばした反動でセトを蹴り倒した。セトが勢いよく転がり壁に背中を打つ。ぐったりと壁に寄り掛かるセトにそいつはセトの首へと手を伸ばす。
「セトッ!!」
セトの方へと向かおうとして気が付く、そいつは僕の方を向いていた。
懐から出した一丁の拳銃の安全装置が下ろされる。急なことに止まることも出来ず、僕は間抜けにも拳銃へと真っ直ぐ突き進んだ。
蛇のように長細い瞳孔が、にやりと歪む。
思い出したのは母さんと、それから無謀にも強盗へと突っ込んでいく自分の姿。
嗚呼、僕は成長しないなぁ。
本当は怖い、怖くて堪らないよ。死にたくない、止めて、殺さないで、痛いのは嫌、死にたくない生きたい怖い嫌だなんでどうして殺さないで助けて――
「good-bye,」
To be continued……?
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続きっぽいのがありますが、全体的にエグいです。
カノ好きさんにはお勧めできません。いや、私もカノ大好きなんですが(笑)
パスワード:カゲロウデイズ四巻後書きより、しづさんが書いたものを半角英字で三文字。