カゲプロ | ナノ




こんなことあってもいいとおもう。某漫画のパロディで、カノ女体化。
セトがセクハラするだけ。



「だから、君は女の子だったんだよ」

 数日前、夏バテで体調を崩した際、キドに今年のは厄介だからと病院に勧められ、半ば無理やり連れていかれたが診断中医師が首を傾げ、まあ色々あって検査した結果、僕は女の子だったということが判明した。
 それから更に色々あって(中身については語るのも情けない、我ながら一生の黒歴史として名を残しそうな取り乱しようだった、とだけ言っておこう)、僕は皆には内緒で今まで通りにやり過ごそうとしていた。だって今更女の子として過ごせるわけないじゃんね。
 けれど性別が違うと分かった途端、世界は僕を取り残しぐるりと回ってしまった。
 異性、生まれてこの方、ずっと同性で腐れ縁だと思っていた幼なじみが実は異性だっただなんて。バレないように、と距離を置いて過ごそうとすればするほどに奴は近付いてくる。
 そして可笑しな話だが、彼奴に近付くだけで身体が火照って仕方がないんだ。

「かのぉーっ! お風呂沸いたッスよ!!」

 ソファーで雑誌を読んでいるとセトが真後ろから突進してきた。そしてそのままソファー越しに僕の身体に手を回す。
(うわっ……ちょ、)
 鎖骨から胸の際どいところに回されている手に、内心ひやりとする。セトに悟られないようにとその手を優しく外す。手震えてなかったかなとか、僕の心の中は落ち着かない。
「ありがと、セト。でも、先に入っていいよ」
 乱入なんてされたら堪ったものじゃない。銭湯に向かったキド達とは別に、アジトに残ったのは不幸にも僕とセトだけ。一緒に入ってきたらいいだろうに、というより入ってこい。
 なんて、そんな僕の内情とは裏腹にセトは不満げに口を尖らせるとソファーに寄りかかった。
「一緒に入ろう」
 セトが再び手を伸ばす。セトの手は意図してかどうかは知らないが僕の胸の前で交差し、臍の辺りまで伸びた。二の腕が胸に擦れてくすぐったい、というよりは、
(や、えっ……なんっ)
 セトの腕がぎゅっと締められると胸に強くセトの腕が当たる。臍の辺りをさ迷っていた手が服の間から中へと侵入してきた。ひやりとした感触に内腿に力が籠る。
「セトっ、どこ触ってんの!」
「えー? あ、カノのここ冷たくて気持ちいい」
(ふぁっ! やっ……そ、そんなとこ触るな!!)
 セトの爪がくるくると臍をなぞり、耳元に息を吹き掛ける。服がゆっくりと持ち上げられていく。
「止せっ……セト、止めてっ……」
 冷房に当たっていた肩口が冷たかったのだろう、セトの唇が肩を噛む。
(んぁっ……や、やばっ変な声、でそうっ!)
 気が付くとセトの腕は僕の胸板をソファーに押さえつけるように胴体に回されていた。胸の真下にある腕の存在が気が気ではない。
 セトの手を退けようと伸ばした腕を逆に掴まれ、片手が下へと引き寄せられる。ぐっと抵抗するが、セトに敵うわけがない。セトの手が重ねられた腕はやがて股間の辺りに到達すると強く押し付けられた。
「んぅっ……ちょ、せとっ!」
「俺に触られて興奮したッスか?」
(なに考えてるんだ、この馬鹿は!!)
 身体を捻ろうにも、セトの手が邪魔でろくに動けない。力を込めようと息を吸った瞬間、雄の匂いが肺を包んだ。
(……――っ!)
 力が抜ける。じんわりと股が熱く濡れそぼっていくのを感じ、視界が滲んだ。
 自分は男ではない、女なのだ。セトには敵わないし、逆らうこともできない。セトはふざけているだけかもしれないが、自分にとってはそうではないのだ。
 女としての自分を認識してしまえば、もう昔のように同性としてセトと接することはできない。狂おしいほどの欲求が女の自分を求める。
 セトをそういう対象として見てしまう自分を欺くことはできない。
 悔しい。けれど、それ以上に情けない。
「もっ……止せよっ!」
 セトの手に爪を立て、足を折り畳んだ。掻き乱されたくない。自分が自分でなくなってしまうようだ。
 頬に熱いのが伝えば、セトはぎょっと手を離した。
「か、かの……?」
「最低っ……ばっかじゃないの!? なに、考えてるんだよっ!」
 膝に顔を埋めようとし、しかしそんなことよりもセトと同じ空間にいること事態が耐えられない。立ち上がると、真っ直ぐ自室の方へと向かう。慌てたようにセトが後を付いてくる。知るか。
(ていうか、女だっていうのバレたかなぁ。だとしたら僕は――……)
 幼なじみが女だった。しかもリアルタイムでセクハラしてた。そもそも伝えられてすらなかった。
 溝を作る要因ばかりが溢れて、泣きたくなる。
 僕は、僕はね、君は知らなかっただろうけれど、

(君とは対等でありたかったんだ)

 身長で力で、性別すらも最早比べることが儘ならない。馬鹿だ、馬鹿みたいだ。こんな下らないことで張り合って溝を広げてどうする。自身を叱咤し、思い直させる。
 隠していた自分が悪い。セトは何も知らなかったのだ。それを怒るのはあまりに理不尽で自分勝手だ。
 後ろを罰が悪そうに歩くセトを振り返り、全てを打ち明けようとした時、

「ごめん!!」

 セトが頭を下げた。凄い勢いで、それこそ九十度なんて目じゃないくらい。ぽかんと固まってしまった僕にセトは続ける。
「カノが最近妙に素っ気ないこと、元気がないこと、思い詰めてること、全部分かってて、それで気分転換に昔みたいに一緒に風呂に入ったらいいんじゃないかって思ったんス! でも、でもっ俺、全然デリカシーとかなくて! カノがずっとずっと気にしてるの知ってたのに……っ!」
「っ!」
 まさか最初からバレていたのか。上手く隠せていたつもりなのに、欺くことにおいては誰よりも長けていたつもりでいたから、その事実は素直にショックだった。
 止まらないセトの勢いは、とうとう僕とセトの間を埋める。セトは僕の肩を強く握りしめた。そして、

「カノ、ずっと俺より力ないの気にしてたのに、無理矢理押さえつけてごめんなさい!!」

「…………は?」

「たまに握り拳を作ってたり、肩を動かしてたりしてたじゃないッスか」
 あ、いや、ごめん。それとこれがどう繋がるわけ? 僕の頭が悪いのかな、それともセトの頭が凄い馬鹿なのかな。どうやらセトは僕のことをまだ男だと思っているらしい。
 言い返すのも馬鹿らしく、更に元よりこれが正解であった為、僕としては万々歳だ。何か胸の辺りがモヤッとするけど。
 とりあえず何時までも痛いのでセトの手を振り払い、部屋に戻ろうとセトに背を向ける。と、瞬間、セトの腕が胴体へと伸ばされた。
「ま、待ってくださいッス! お、おれ、カノにいい、た……い、ことが」
 セトの言葉が不自然に止められた。不審に思い、声を上げようとすると、

むにっ

 違和感に身体を見下ろす。胸が、胴体に回されたセトの手の一本が胸部に宛がわれていた。乳房を鷲掴みするように、ぐにゅりともう一度揉みしだかれた。
「えっ」
 気持ちいいというよりは絶大な違和感。
 後ろを振り向くとそこには真っ青な顔で固まるセトの姿が。

「か、かの……こっこ、こここれっ!」

むぎゅっ

 あ、と小さく声を漏らしてしまうと、連動するようにセトの手に力が篭った。なにこれ、凄く恥ずかしい。
 互いに動けないでいると、後ろでガタン、と物が落ちる音がした。嫌な予感しかしないがそちらを見ると顔を真っ赤にしたキサラギちゃんが。

「し、しし、しつれいしましたー!!」

「ちょ、待って!! 誤解だからー!!」



―――――――――――――――

セトとカノは出来てるってモモの中では決定事項になってしまいそう。気まずいだろうなぁ。
男同士だけど、カノさん頑張って!って陰ながら応援してたんだけど、実はカノは女で、セトとは付き合ってないと告げた途端に凄い協力的になるモモとか(笑)

役得みたいなセトさんですが、前半は全てセクハラです。女とは知らずにやっていたと言い逃れるにも、言動がアウトすぎるセトさんです。
女体化をもっと生かせれば良かったのですが、とりあえずここまでが限界。
開き直ったカノがセトと付き合い出して、髪伸ばしてスカート履くまでの過程が見てみたい気もします。
あと、タイトルは何も思い浮かばなかった。





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