カゲプロ | ナノ



続かないパロディ



貴音→とあるゲームの全国大会で準優勝をした実力者。
『次、“準”優勝とか言ったら……』

遥→貴音に誘われゲームを始めるも、恐ろしいスピードで頭角を表し今では貴音とツートップ。
『どうしよう、貴音! 黄金のツートップにするか、伝説のツートップにするか、だってよ!』

伸太郎→あらゆるゲームにおいて天才プレーヤーと騒がれているが、公式試合には一回も出場したことがない。チキン故、エロゲ耐性は零。
『素人童貞素人童貞ってうるせぇんだよっ!!』

桃→クソゲーに必ず現れるというアイドル。実力は下からトップクラス。ランキングを下までスクロールすると高確率で彼女の名前が出てくる。
『ぜんっぜん面白いよっ!! このゲーム!!』

木戸→メカクシ団のリーダー。基本戦闘には参加しない。エンカウント率低め。
『え、いや……ぬこぬこ牧場って、え? これRPGなのか?』

瀬戸→メカクシ団員。生粋のアタッカー。多分典型的なネット人格。
『ヒャッハーッ!! ……ッス』

鹿野→メカクシ団員。もはやまともにゲームをする気すらないハッカー。おそらくコイツが犯人。
『え? なにこれ僕が悪いの?』

茉莉→桃の親友。やっぱり下から、と思いきや、クライムアクションゲームにおいて彼女の右に出るものはいない。
『ふふふ……愚かなる人類よ、我等のゲームを規制したことを後悔するがいいっ!』

文乃→伸太郎の親友。伸太郎が童貞であることをきっちり証明できる唯一の存在。
『やっぱり、私は君を受け止めなきゃ駄目だったんだよね?』

研次朗→悪のりが大好きなろくでもない大人。
『妻も財布も皆逃げちまったよ、俺から』

薊→謎のプレーヤー。クライムアクションゲームは苦手。






ぶぉん、とヘッドフォンの奥から響く私の世界と向こうの世界を繋ぐ音に私は柄にもなく心を躍らせた。

数時間前、唐突に送られてきた謎のディスク、そこには稚拙な字で『おめでとうございます、貴女は新作ゲームのテストプレーヤーに選ばれました!』的なことが書いてあった。すぐに相棒である遥に連絡をすると遥にも届いていたようで私達はゲームの中で落ち合うことを約束し、現在に至る。
遥が珍しく興奮気味に誘って来てくれていたこともあり、私としても不本意ではない。

液晶画面に表れた『ユーザー名を入力してください』と書かれた欄に迷うことなく名前を入力しようとし、手を止めた。
もし、私が別の名前で登録したとして遥は一発で私を見分けてはくれるのだろうか。そんな何気ない好奇心から私は自身の名前の欄に戸惑いながらも『***』と入力をした。



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目の前に広がるのはCGとは思えないクオリティで再現されている自然の数々。それを白い髪の少女は興味津々といった様子で眺めていた。
隣に立っていた赤いジャージを着た男が呆れたように溜め息を吐く。

「そろそろ動いても良いッスか?」
「まだ、あともうちょっとだけ!」

ねだるように頭を下げる少女に男は渋々といった様子で頷く。

「ホント、あと五分したら置いてくッスからね」

そんなことを言いながらも何だかんだで少女から離れようとはしない男は現実と見間違うような景色をぐるりと見渡し、少女の方を再度見た。白い柔らかそうな髪と、少し幼い容姿を余すとこなく引き出すであろうふんわりとした水色のワンピース。
実際、こんな少女が存在するというのならば惚れない男はいないのだろうと思えるくらい少女は整った顔と容姿を兼ね備えている。けれど、男はこの少女の中身がまるで似付かない、食えないものだと知っている。
羊の皮を被った狼とは正にこのことだ、と男は肩を落とす。現実でもこのくらい可愛かったら、なんて思わずにはいられない。落胆の意を込めた溜め息を吐くと少女はゆっくりと振り返り、それから可愛らしい顔を皮肉っぽく歪めながら笑った。

「そんなに“僕の身体”が心配?」

男が苦々しく「当たり前ッス」と言うと少女はころりと表情を変え、今度は上品に笑う。

「ありがとう。僕も君の身体が心配だけど、もう少しだけ見て回ってもいいかな?」

少女が上目遣いにお願いをすると、男は本日何度目かになる溜め息を吐きながら仕方ないといった風に、

「あと五分だけッスよ」

と言った。



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おかしいな。どうやら、この世界は少しヤバいらしい。なんて何処かで聞いたことのあるフレーズを繰り返しながら遥はCGで作られたガラスに写る自身の身体を何度も見返した。
名前の入力の時、少しだけふざけて名前を打ったのがいけなかったのだろうか。ガラスに反射される自身の姿は何度見ても何時ものゲームに使用している男のものではない。
通常よりも目付きがキツく、腰まで伸びた髪と丸みを帯びた身体は見るまでもなく女性のもの。
参ったなぁ、と首を傾げながら貴音に連絡をしようと向き直るとそこには、

「……エネ?」

青い髪のツインテールとサイズの合わないジャージは何度も見た。何度も見たし、何度も共闘した。疑いようもない相棒の姿だ。
しかし、エネは此方を見ると不審そうに目を細めながら聞いたこともないような低い声で言う。

「誰……?」

ぴ、ぴ、ぴ、と初期設定から一切弄られていないメールボックスに新着のメールが届く音がしたが黙ってエネを待つ。エネは何かを考えるような素振りを見せるが、次にはエネの方にもメールが届いたようでエネは少し迷ったように視線をさ迷わせた後、顎でメールを確認するようにと促した。



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