カゲプロ | ナノ



終点日記
シンカノ


某日、月曜日。

「―――――――」

シンタローくんが何かを言っている。僕はとりあえず無視をした。


某日、火曜日。

扉が軋んだが、僕は無視をした。


某日、水曜日。

ずっと寝ていたらしい。謀らずも無視をしてしまったようだ。


某日、木曜日。

扉の隙間から紙切れが入れられていた。仕方がないので上下を入れ替え、下部にセロテープを貼り付けた。


某日、金曜日。

紙が動くのが見えたので足で踏んでいたら扉が揺れてびっくりした。


某日、土曜日。

久しぶりにシンタローくんが扉の外で何かを言っていた。忙しいので無視をした。


某日、日曜日。

外に出るとホームレスの溜まり場みたいに汚くなっていた。住人はいないようだったのでセトの部屋の前まで押しやった。


某日、月曜日。

何時もより少し離れた位置からシンタローくんの声がした。


某日、火曜日。

なんか扉が静かだ。とりあえず寝ようかな。


某日、水曜日。

あまりにも静かだったので廊下を覗いてみたら、シンタローくんはまだセトの部屋の前にいた。


某日、木曜日。

暫くは平和に暮らせそうだ。


某日、金曜日。

暇だったので扉に紙切れを挟んでやったが全然動かなかった。まだセトの部屋の前にいるようだ。


某日、土曜日。

紙切れを追加してみた。やっぱり動かない。


某日、日曜日。

久しぶりに外に出るも、ホームレスの溜まり場みたいなのは未だにセトの部屋の前にある。ムカついたので元の位置に戻した。セトが何処かニヤニヤしながら見ていたような気がする。


某日、月曜日。

ようやくシンタローくんの声が帰ってきた。でも煩かったので無視をする。


某日、火曜日。

今日は大人しい。


某日、水曜日。

紙切れが挟まっていた。そういえば、僕も挟んでたんだっけ。


某日、木曜日。

悪戯する気も起きなかったので紙切れを取ろうとするもなかなか抜けない。


某日、金曜日。

『早く出てこい』


某日、土曜日。

『日曜日』


某日、日曜日。

外に出るとホームレスの溜まり場みたいな場所にホームレスみたいな男が座っていた。


某日、月曜日。

そういえば、無視をするのを忘れていた。


某日、火曜日。

シンタローくんは扉を鳴らさなかった。


某日、木曜日。

うっかり一日寝てしまったようだ。


某日、金曜日。

紙がない。


某日、土曜日。

こっそり外を見てみると溜まり場が綺麗になくなっていた。


某日、日曜日。

セトの部屋の前にもいない。セトが笑いながら僕を見ていた。


某日、月曜日。

あの日、僕はシンタローくんと何を話したんだろう。思い出せない。


某日、火曜日。

紙切れを挟んでみた。セロテープで下を固定しながら。


某日、水曜日。

セロテープを外してみる。


某日、木曜日。

紙は動かなかった。


某日、金曜日。

外はやはり綺麗なまま、シンタローくんの姿は見当たらない。


某日、土曜日。

外が何やら騒がしい。


某日、日曜日。

外に出てみると、そこには綺麗な犬小屋があって、男は仏頂面で座っていた。


某日、月曜日。

紙切れがなくなっていた。


某日、火曜日。

『いい加減、外に出ろよ』


某日、水曜日。

『日曜日』


某日、木曜日。

『暖かいぞ』


某日、金曜日。

『日曜日』


某日、土曜日。

窓を開けたら予想以上に寒かった。


某日、日曜日。

部屋が寒かったのでシンタローくんの小屋に入ってみた。暖かい。


某日、月曜日。

シンタローくんは僕の肩を揺らしながら『朝だ』と言葉少なに伝えた。目の前にはやや殴り付けたような痕がある扉が寒そうに佇んでいた。


某日、火曜日。

蛇足だろうか、部屋の扉は開かない。


某日、水曜日。

紙切れを挟んでみた。


某日、木曜日。

『寒くないの?』


某日、金曜日。

『日曜日』


某日、土曜日。

無機質な扉が開くのをただ待つ。


某日、日曜日。






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