カゲプロ | ナノ


※セトとカノが戯れてます。





帰り道、キドの死刑勧告のような言葉が反芻する。
うわぁやばいよ、あれ。これ言われたのがシンタロー君だったら僕絶対に爆笑してるし、手放しで歓迎するくらいには面白いから多分、相当厄介なことになってるよ。
何だかんだでセトも不機嫌になってるし、どんだけ飽き性なんだよ。そして数分前の自分を殴りたい、なんて頭の中で毒づきながらポリタンクを持っている方のセトの手に手を重ねた。
それから驚いたようにバッと此方を振り返るセトに、どんだけ僕が楽をすると思ってんのさと少しだけ苦笑いをしたのだった。





「いやぁ、動くか半信半疑だったッスけど動いて良かったッス」

ぼうっという鈍い音を確認した後、ゆっくりとセトがソファーに座った。
まだ部屋が暖まってないということもあり、服装は外に居た頃と大差ない。くつくつと煮えた牛乳をそれぞれのマグカップに注ぎ、セトの隣に座った。

「あ、どうもッス」

マグカップの片割れをセトに渡してやるとセトはアチッ等と言いながらも二三口飲み込んだ。僕は残念ながら猫舌なのでテーブルの上に放置。代わりに読みかけだった雑誌を広げた。

「キド、さっき何て電話だったんスか?」

ことん、とマグカップの底とテーブルがぶつかる。セトがマグカップを置いたのだ。
僕の真似をするわけじゃないんだろうけど、セトは近くにあった付箋だらけの求人雑誌に手を付けた。

「んー、なんかね、出来るだけ早く来いよって」
「それであんなに笑ったんスか?」
「うん、多分、キサラギちゃんとエネちゃんの差し金だろうけどね」
「へぇ? なんて言われたんスか?」
「さっきから質問ばっかだね」

「答えてほしいッス」

不意に真剣な声音が告げられたと思うと、とん、と肩を押され、ソファーに押し倒される。セトの顔が鼻の先くらいまでに迫っていた。セトが読んでいた雑誌は無惨にも床に放り投げられていて、あれ絶対ページ折れてるよなんて関係ないことを思った。
じっと此方を見てくるセトの視線が何処と無く心地悪く、逃れるように手に持っていた雑誌を顔まで持ち上げると、セトの手がやんわりと雑誌を退ける。そしてそのまま取り上げてしまうと床に落とされた。

「カノ、こっちを見てくださいッス」

顎を掴まれ、上を向かされたままセトの顔が降下していく。てっきりキスでもされるかと思ったけど、セトはそのまま過ぎていくと啄むように首筋や鎖骨に数回口付けを落とした。

「んっ……くすぐったい、んですけど」

マーキングが済んだのか、今度はぬるりとした舌が肌を濡らした。舐めるように何度も往復する感覚にゾワりと粟が立つ。セトの頭を退けようと手で押すが、セトは更に火が付いたように手首を掴むとそこに吸い付き赤い花を散らし、痕を舐めるように舌を這わした。

「ゃ、ちょっ……セト、駄目だって」

手首を押さえる手とは反対の手が服の間を滑り込むように入っていき、脇腹の辺りを撫で上げられる。冷たい手の感覚に身体の芯から熱を奪われるようだった。
手はだんだんと上に上っていき胸に到達したと思いきや、数回揉みしだくように胸を撫で回され、ゆるりと立ち上がってきた胸の突起をきゅっとつねった。

「ひゃうっ……ぁ、むね、はっやめっ……」
「好きな癖に?」

意地悪く細められた瞳にずくんと下腹部が重くなる。ぎゅっと突起を離そうとはせず、弄ぶように強弱を付けながら繰り返し潰されると胸に意識を持っていかれ、だんだんと熱を帯びてくる。触られていない反対側の突起の先端が服に擦れる感覚すらももどかしく、腰が揺れてしまう。
セトの口角が持ち上がるのを感じた。このままではセトのペースに流され、その手は下肢にまで伸びることだろう。諦め、肩の力を抜くとセトが一気に距離を詰めてきたので顔の前に手を翳す。

「セト、……んっ、ちょ、ゃあっ……手、止めろっばか!」

人が口を開いたのにも関わらず、手を止めようとしない馬鹿の頭を叩くと、セトは未練がましそうに一回だけ突起を爪の先で弾いて手を止めた。「今度は騎乗位でカノの言葉を遮りながら犯したいッスね」なんて捨て台詞を残しながら。やったら去勢してやる。

「言う気になったッスか?」
「……なったから退いてくれないかな」

言うとセトは「お利口さんッス」と呟いて頬にキスをした。それから起き上がると落ちていた雑誌を拾いテーブルの隅に置く。
僕も服装を正して起き上がった。

「あぁ、寒い。セトまじふざけんな」

大分冷えたマグカップに手を付け、温いそれに喉を潤す。若干胸が敏感になっていて苦しいが、移動する前に絆創膏でも貼ってしまえばなんとかなる程度だろう。

「カノが素直に教えてくれないからッスよ」

悪びれもせずに言うセトの足を軽く踏みつけ、時計を見た。

「そろそろだね」

部屋の方はまだまだ暖かくないが、所詮これが現実ってやつだろう。せいぜいキド達が帰ってきた時にでも脅かしてあげればいいんだから。

「僕の名誉の為に最初に言っておくけど、あれは僕の趣味じゃないからね」






また外である。
あの後すぐに来た宅配に僕らはアジトの戸締まりとガスの確認をしてから石油ストーブを止め、家を出た。
日が傾いたせいか、さっきより幾分か冷たくなった空気が耳を刺すようである。マフラーを上に引き上げ、耳に当たらないか試行錯誤している横でセトはオードブルが乗せられた自転車(さすがに石油までは重くて乗せられなかったので本日初仕事である)を引きながら、また手を擦っていた。

「ねぇ、なんで手袋してないわけ?」

半ば呆れたように訊ねた。もしかしたら、学習機能が備わってないのかと内心危惧しながら。

「いや、よく見たら手袋穴空いてたんスよ」

それでも何もしないよりは、というか何で気付かなかった、とか聞きたいことは山程あったけど白い息を吐きながら楽しそうに笑うセトを見てるとそれらを聞くのが馬鹿馬鹿しく思えて止めた。

「セト」

片方の手袋を外し、ポケットに仕舞うとその手をセトに差し出す。煩わしくも予想を裏切らない、「ん?」なんて惚けてみせるセトの手を強引に握ってみせた。勿論、自転車を押してない方の手である。

「見てて寒いから、出来るだけ死角にいてよね」






merry X'mas 2012



―――――――



ごめんなさい!
キドの下りは後日改めて上げます!






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