カゲプロ | ナノ


※学パロ



好きな教科は数学。
苦手な教科は現国。
ちなみに現国は現文と訳したりもするらしいが、自分の耳には馴染みそうになかった。


「ねー…この、三番の問題ってさ。あ、(4)ね」


高校三年の夏休み、といえばどんなにふざけてみせようと受験勉強の季節である。
それはあのカノさんも例外ではないらしく、毎日のように俺の家に来ていた。
まあ…俺としては(もう推薦で決まっているけど)勉強できるし、その…カノさんと一緒にいれるとか良いことしかなくて。いつか、バチが当たらなきゃいいんだけどなぁ。

「あー…ここの問題は、この公式を使って、」

身を乗り出し近づくと、カノさんが半身下がった。

「………」
「…あ、は♪」

じっとカノさんに視線をやると申し訳なさそうな、居心地の悪そうな顔。それから誤魔化すようにやっちゃった☆みたいな顔を取り繕う。

つ、と追うように身を寄せれば、またカノさんが離れた。

暑さの為、少し上気した頬に汗が伝う。暑いのはカノさんも一緒なのであろう、うっすらと首筋に色気…
いや、汗が。
室内の温度計を見れば、三十度を越えていた。扇風機は回っているが温い風を運ぶばかり。
クーラーはエコだなんだと言われ、キドに取り上げられた。きっと今頃、壊れたエアコンに代わり、アジトの空調に一役買っているであろう。団長、マジ怖かった。
そんなことを考えながら、カノさんの腕を掴んで逃げないようにしっかりと握る。

「あんま露骨に避けられると傷付きますよ」
「いや、そーゆーわけじゃないんだけどさぁ」
「じゃあ、どういう意味ですか?」
「あ、だめっ!近寄っちゃダメ!」

ぐっと強い力で押されるが、逆に此方に引いてやるとカノさんが倒れ込んでくる。

「わっ!?」

ふわっとした猫っ毛が胸に収まり、ついでに俺も後ろに倒れた。やだもう、この非力。

「カノさん、かっる」
「えっ!?ちょ、離して!」

ぎゅっと腰に手を回すとカノさんが真っ赤になりながら暴れる。
うぅっ…男に生まれて良かった!ありがとう、母さん!!

「ちょっと!聞いてる!?」
「なんで、今日はそんなに嫌がるんですか?」
「え……いや、だって…、」

戸惑うような、そんな顔でカノさんが見上げてきて。無言で返すと、カノさんは更に赤く染まりながらモゴモゴと呟いた。

「……僕、…汗臭くない?」


少し涙目になって、窺うように見つめてくる、このアングルだけでも堪らないというのに!今!俺達の姿勢はカノさんが俺の上に覆い被さるような体勢!
とどのつまり、誘ってるようにしか見えなかった。

「いや、よく嗅いでみないと分からないので一旦脱ぎましょう」
「やだよ!」

カノさんの意見を無視して、シャツの隙間から手を這わすと確かにいつもよりしっとりしているような気がする。

「んっ…ちょっと!本気で止めてって!」

「はぁ…もう本当、カノさんは素直じゃないなぁ」

なんて言いながら、カノさんを押し倒す。きょとんとした顔が可愛い!
途端に焦り出すカノさん。

「ほんと!本当に嫌なの!」
「大丈夫、大丈夫」

軽く流しながら、カノさんの首筋に顔を埋め、舌を這わす。いつもよりしょっぱいけど、嫌いじゃないかな。
息を吸うと、びくんとカノさんの体が跳ねた。

「い、や…って、言ったじゃん!」

あ、涙声だ。
顔を上げると、目一杯に涙を貯めたカノさんの姿。汗とか、赤くなった肌とか、少しだけ荒い息遣いとか。
全部、興奮材。

「…やば、起った」

「はぁあ!?なんで!」

信じられないといった顔で睨んでくるカノさんの額にキスを落として、

「大丈夫、カノさんの汗の匂い、好きだから」
「んなっ!」
「それに、今から匂いとか分からなくなるくらい、ぐちゃぐちゃにするから」
「〜〜〜〜っ!!」

耳元で低く呟くとカノさんは口をはくはくさせながら、声にならない叫びをあげる。
そこに唇を落としてやれば、カノさんは諦めたように背中に手を回してくれた。

嗚呼、幸せ。
なんて、笑うとカノさんが頬をつねってきた。地味に痛い。痛いけど、

「幸せだなぁ」


暑さゆえの戯れ言




カノさんに思いっきり引かれたのはまた別の話。


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お題は空をとぶ5つの方法様より





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