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もし、このゲームが頭脳戦だというのなら多分レミは二人の足を思いっきり引っ張っちゃうことになると思うの。
だから、私は二人の邪魔にならないように別の視点から頑張るよ。


『十分以内に教室にお入りください』

丁寧な声が校内に流れた時、私たちは仙石くんのクラスである三組にいた。
バンドが上手く嵌められなかった私に桜と仙石くんが甲斐甲斐しく設定までやってくれるのが酷く申し訳なく、けれど同時に嬉しくもあったのは秘密である。
仙石くんと桜はさっきからずっとゲームについて考察していたが、私は分からなかったので仙石くんに借りた本を読んでいた。
本当は携帯がやりたかったのだが、どうしてか圏外で繋がらない。
それは他のクラスメイトも同じであるのも分かっていたのだが、考察に夢中な二人は気づいてるのかな。

放送がなると仙石くんも考察を止め、メモの用意をする。
細く長い指が羨ましい。

『十分待つ間に、間に合わなかった方々の名前を呼んでいきますので呼ばれた方より体育館に移動してください』

数名の名前の中にキョンキョンたちの名前がないことに小さく安堵した。
もしかしたら参加してないのかもしれないけど、参加してたらいいなぁって。
だけど、間に合わなかった人たちはどうなるんだろう。
宿題渡されて帰るように言われたり、補修になったりするのかな。
なんて何の特にもならないことを考えていると液晶にアニメポップな白兎が出てくる。
クラスの女子たちは口々に可愛いと言うけれど、真っ赤に充血しているような大きな目と剥き出しの歯が強調されているみたいで私にはとても怖く感じられた。

『それでは、第一ゲームの説明をしましょうか。まず時間制限、十七時から二十一時までの四時間、行います。ゲームの内容はポイント制です。最初に一人50ポイントをそれぞれバンドに表示させていただき、ポイントが0になった方から脱落してもらいます。チームは進行上、三人より減ってしまっても構いませんが、三人より増えることのないようお願いします。ゲームスタート時の場所は各班自由となってますが、班ごとの行動に努めてください』

つらつらと述べられる内容を即解釈できるような頭は持ち合わせてない。
だけど、何処かにヒントのようなものが転がってないか考える。

『次にポイントの減退と加算について。ポイントの譲渡はチーム内でのみ行うことが出来ます。ポイントは毎時間15ポイントずつ減退していきます。止めるには校内にランダムで隠してある設問に答えていただき、その回答を元にカードを手に入れてください。カードに記入してある八桁の数字をバンドに入力すれば二時間減退を止めることが出来ます。またカード一枚につき最大三回分の入力が書いてあります。ちなみに既に使われたものは使用出来ないので勘違いしないでくださいね。救済処置、ダイアルを回していただくと分かりますように支出ゲージがあります。ここに40ポイント入れていただきますと最高で二時間チーム全体の減退を止められます』

語られる言葉が早すぎて覚えることすら難しい。
仙石たちを見ると、無心でルールをまとめていた。

『第一ゲームのクリア条件は指定場所を探してもらい制限時間内に移動してもらうことです。それでは皆さん、ゴールまで頑張ってくださいね』

手を振る兎のイラストを最後に沈黙する画面。
最初は戸惑っていた参加者たちも少し相談すると各自行動を始めた。
仙石くんと桜もルールのメモを合わせ、間違いや見落としがないかを確認していた。
暫くそれを見守りつつ、教室から私たち以外の姿がいなくなるのを見送る。

腕に嵌められたバンドを確認すると確かに時計の横に50ポイントが加算されていた。
ダイアルを回せば、支出ゲージが出てくる。
これに40ポイントを入れれば、二時間チーム全体を守ることができるらしい。
だけど、一時間ごとに15ポイントずつ減っていくのだとしたら、これは最初しか使えない?
一回だけなのかな?

「これってさ、最初一人が40ポイントを入れて、次の二時間の時に更にもう一人が40ポイントを出すとクリア出来ちゃうよね」

ぽつりと呟いた言葉に仙石くんが頷く。
どうやら、同じことを考えていたらしい。
ちょっとだけ嬉しくなった。

「レミの言う通り、このゲームにはカードを探さないという選択肢が存在する」

そういうと仙石くんは一枚の白紙を取り出した。

「多分、それはゴールだけを集中して探す最も無駄のない攻略方とも言える」

だが、同時にそれはチーム全体のポイントが80減らすことにもなる。
通常攻略であるカード探しの報酬は支出と同じ二時間。
しかしカードには三回分と言われていたが、おそらく三人分という意味になるのだろう。
つまり、支出を出した時と報酬は変わらない。
だが一つ、カードには見落としがある。
それは総支出だ。
もし仮にカードを一時間以内に一枚、更に二時間以内に一枚を見つけることが出来たのなら、支出は0。
しかし、見つからない場合は一時間毎に一人15ポイントでチームごとに45ポイント失うことになり、これは支出の40を大きく越えることになる。
一枚のカードを見つけたとしてもやり過ごせるのは二回の減退のみ。
これは明らかにフェアじゃない。
素直にカードを探したチームが馬鹿をみるような仕組みとなっていた。

「目的は支出か、それとも選別か」

これから先が本当に頭脳戦だとするのなら、最初に人数を絞っておく必要がある。

「このカードを探せってやつ、明らかに運よね」

決定的なものがないのは全部一緒。
仙石くんと桜が悩んでいるのを横目にふと疑問に思った。

なんで白兎はカードの説明の時、わざわざ最大三つ、最高二時間なんて言い方をしたんだろう。
これじゃ、まるで。

「…もっと少ないカードがあるみたい」

「え?」

桜の言葉にはっとを顔を上げた。
いけない、どうやら口に出してしまっていたようだ。

「ううん、何でもない」

そんなことより、話し合おう。

誤魔化すように笑顔を振り撒く。
ちらりと見た時計の針は【16:27】を指していた。







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