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ルールは簡単だったが、それが何を意図するものなのかがいまいち掴めない。
前も後ろも分からなくなるような、そんな不安が堀の頭を過っていた。

「なぁ、堀」

かけられた声に堀が前を見るとそこには珍しく溝内がいた。
溝内がこんなレクリエーションに参加するなんて珍しい、てっきり下らないと一足し帰っているものかと思っていた。
ふと溝内が一枚の紙を持っていることに気が付く。

「それは?」
「あぁ、あの兎が言ってたことをまとめてみたんだ」

お前にちょっと相談してみようと思ってな。
溝内から紙を受け取り、内容を確認する。
確かに説明とともに消えてしまったルールを忘れないうちにまとめておく必要はあった。
それをまとめていてくれたとなると幾分か楽になるし、有り難い。

「ねぇ、ちょっとこれ写してもいい?」
「別にいいぜ」
「ありがとう」

鞄からルーズリーフを出し、要点だけを書き綴る。

・ルールは厳守、違反者にはペナルティ。
・ゲーム中、赤い線を越えてはならない。
・リタイアは認めない。
・配布されるバンドは必ず着用。
・指定時以外は自由行動可。
・16:00までに三人一組のチームを登録しなければ、ゲームオーバー。
・アンゴラ兎の白兎。
・第一ゲームの発表は16:00から。

「要領得ない内容ね」
「そうなんだよ、だからお前にも聞いておこうと思って」

まず、主催者が何をしたいのかが分からない。

「こんな設備、たかがレクリエーションに使うとは思えないわ。来年度の新歓の予行…もしかしたら、新しい備品を試作かもしれないし」
「こんな暑い日にか?それに四時から第一ゲームって終わりが見えない」

リタイアが不可能な上、ゲームオーバーの基準がわからない。
下手に赤い線を越えて、ペナルティを受けるのはあまりに間抜けすぎる。

「とりあえず、チームを組んでバンドってやつを確認してみるしかないのかしらね」

チーム、チームという言葉で気が付く。
三人一組のチームでは石川と宮村、由紀らと揃って組むのは不可能だ。
仙石たちはいつもの三人で組むだろうし、隣のクラスから井浦と柳くんを引っ張ってくるかしない。
けど、井浦は地味に友達多かったり、こういう場面では異様に人気が高かったりするから早めに組まないと、柳くんも倍率が高すぎる。
無事に組めればいいのだが。

「堀さん、一緒に組もー」

宮村が由紀と石川を連れてやってくる。

「あーでも、一人余っちゃうんじゃない?」

由紀が困ったように笑う。
石川はどうしようかと悩んでいるようだし、私もどうしようかと考え込む。

「なぁ、堀。俺と一緒に組まないか?」

溝内くんの言葉に宮村の笑顔が一瞬凍りついた。

「え…あ、みぞおーちくん?」
「溝内だ。堀、このゲームは俺と組むべきだと思うんだ」

真っ直ぐ此方を見つめながら言う溝内に内心、堀も同意していた。
本気で勝ちに行くなら、石川たちと組むより溝内と組んだ方が有利であろう。
だが、本当にそれでいいのか?
親友よりも勝つことに執着して私は何を得る?
優勝賞金もあるかどうか怪しいこのゲームは勝つことよりも大きく親睦を深める意味合いがあるように思える。
ならば、答えは簡単、誘いを断ればいい。
しかしそれと同時に堀の興味はこのゲームの真意に向けられていた。
最短距離で答えを知りたい。
堀の心はそう訴えていた。
答え、何か返事をしなければ。
喉に張りついた言葉を必死に剥がそうとしていると横で宮村が不意に笑みを浮かべ、堀の肩に手を置いてきた。

「いいね、それ。ねぇ、堀さん、溝内くんと俺と三人で組もうよ」

宮村の言葉が一瞬理解できなかった。
石川と由紀は?
すがるように宮村の目を見て気が付く。

笑ってない。

確かに笑みを浮かべていた宮村の顔には堀の知っている宮村の笑顔はなかった。
堀の視線に気がつくことなく優しい視線で溝内を見ている宮村に堀は悟った。

あぁ、宮村は今、確かに嫉妬をしているのだ。

「みやむ「堀さん、俺、絶対に足引っ張ったりしないから」

やっと此方を向いてくれた宮村は私の答えを待っていた。
一人の男として、返事を待っているのだ。
何も言い出せない私に石川が小さく耳打ちをしてきた。

「…堀、宮村のためにも組んでやってくれないか?」
「でも、」
「俺たちは俺たちで何とかするからさ」

宮村の意志を尊重してやってくれ。

そんな風に石川に頼まれてしまえば、断ることは出来なかった。

「分かった、一緒に組みましょう」

諦め、頷く堀に宮村と溝内は改めて向かい合うとよろしくと手を握り、挨拶をした。
無論、それは一種の宣戦布告のようなものだった。

現在時刻。

【15:34】







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