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※不謹慎なくらい、モブが死ぬし壊れる話です

パロディというか、転生ネタです



昔から俺の周りではよく事故が起きていた。
事故というより事件というべきか。

覚えているもので一番最初の事件は幼稚園に上がってすぐのやつだったと思う。
遠足の帰りのバスで、皆で撮った集合写真を見ようという話になり、先生も笑顔で頷いたのだが、カメラを確認するなり眉間にシワを寄せ、次に唖然とした顔になり、最後に吐いた。
次の日から先生は来なくなった。
それから、パタパタとドミノ倒しのように数人の子達が怪我をしたり、病気に掛かったりするようになった。

俺は何ともなかったので、とても不思議な気分だった。

次の事件は確か、小学生の時だ。
隣の席になった子がトラックに跳ねられ、意識不明となった。

俺は皆と鶴を折りながら、可哀想にと涙を流す級友の言葉に静かに頷いた。

次の週、何人かの級友が通り魔に刺された。
担任が逮捕された。
先生は気が触れたかのようにぶつぶつと支離滅裂なことを言いながら、何かに脅えるよう身体を震わせていた。

学年も上がって、クラスも変わった。
始業式の日、霊感があるというクラスメイトが俺を見て、叫びながら嘔吐した。
次の日、その子はいなかった。

この後も似たようなことばかりが続いていく。

そこそこ仲の良かった子が突然自殺したり、交通事故にあったり、神隠しにあったり、殺し殺され。
中学の頃には、もう名前を覚えるのは止めた。
人の死を数えるのは諦めた。
暗い中学時代も終わり、高校に入ると狂ったように明るく振る舞うことを覚えた。
気に入った子に近付いては、どのように死んでいくのかを楽しんだ。

おそらく、この時、すでに俺の中で死は日常と重なっていて一種のゲームのようなものになっていたんだと思う。

そんなゲームも飽きてきた頃、大学に入ってから始めたバイト先で霊感が強いと言う先輩がいて、彼は多少の災厄なら祓うことが出来ると聞いた。

ちなみに俺は霊とか信じてなかった。

先輩はすぐに俺の元に来た。
焦った様子で俺の背中をバンバンと強く何回も叩くと舌打ちをし、神社に行って祓うように言ってきた。
正直、痛かったし、ムカついた。

暫くして、同じシフトだった子が重度の鬱病になって辞めた。
先輩は懇願するように何回も頭を下げ、俺に祓うように告げた。
時に俺の後ろに向かって、必死に叫んだり。
お札をもらったことがあるけど、その場で破り捨てた。
だって、その方が面白そうだったし。

そういえば、最近、夢を見る。
何回も何回も同じ夢を。
それはとても幸せなものだった。
幸せで悲しい。
俺は綺麗な赤を抱きながら眠る。
それが嬉しくて嬉しくて、すっごく満ち足りていて、誰かと共有したいんだけど、その誰かはずっと泣いてる。
俺が見えてないみたいで、気付いてないみたいで、上空にいる何かに手を伸ばして、一緒に何処かへ行こうとして、俺を置いていこうとする。
すると、綺麗だと思っていた赤もどす黒く汚れた鉄くさいものでしかなくて、俺が向こうに行けないように縛り付ける枷になる。

嗚呼、もういっそ彼の元に行けないのなら、

「…ごめんね、×××」

そうやって俺は自らの赤を引きちぎる。
痛くて気持ちよくて、それでも辛かった。


「…ゅ―…りゅ―う、雨生、雨生、おい!」

「へっ!?あ、はいっ!」

先輩の声ではっと我に返る。
周りを見渡すとそこは見慣れたレジだった。

「雨生、お前…まだ祓ってないだろ!」

先輩のドスの聞いた声がぼぉっとしていた頭に響く。
そういえば、先輩はなかなか死なないなぁ。

「…祓うも何も俺はそういう宗教じみたことは好きじゃないんで」

先輩が悔しそうに顔を歪める。
俺は客が此方に向かうのを確認してレジ打ちに戻った。
その際、小さく先輩の声が聞こえた気がした。

「…貴方には、雨生に害を与えることしか出来ません」



気にしないでいると暫くして、店長が慌てた様子で駆け寄ってきて手を引いてきた。

「雨生!ちょっと来い!」

「…ぁ、ア゙#%&ぁ¥イ゙〜〜!」

引かれてやってきた先には狂ったように笑う先輩。
だらしなく開かれた口から溢れる唾液と焦点の合わない瞳、可笑しな方向に曲がった首は何処を見て、そして笑っているのかさえあやふやで理性というものがおおよそ感じられなかった。
先ほどまでの先輩とは明らかに違う様子に、彼も例外ではないのかと肩を落とした。

「…あんた、COOLじゃないね」
「あ?雨生、何か言ったか?」
「いえ?」
「そうか、じゃあ―…」

ぼそりと呟いた言葉に店長は首を傾げるも気にする余裕がないのか曖昧に頷くと、そのまま警察と医者を呼ぶと出ていってしまった。
とどのつまり、俺はやっかい事を押し付けられてしまったのだ。
仕方がないので、ゆっくりと変わってしまった先輩の方へと視線を投げる。

ふと、そこで気がついた。

「あんたは何を見て、何を聞いたんだ?」

当然のことのように返事はなかった。

後日、先輩は精神病院へと入院することが決まり、程なくして飛び降り自殺をした。


俺の後ろには何かがいるって皆が言う。
それは悪魔か、はたまた死神なのか。
俺には見えないし、聞こえないから分からない。
ただ、後ろにいるものがどうしても俺の興奮という興奮を刺激し、最高にCOOLなものを見せてくれるんじゃないかって。
想像して、悲しくなった。

「ねぇ、××。ねぇ、ねぇってば」

夢の中の俺は背伸びをする。
届かない何かに必死に手を伸ばすように。
いいな、それ。
俺にもちょうだいよ。
そんな必死なんだ、きっといいものに違いない。

「×〜××っ?」

××って、なんだよ。
そこだけが綺麗に切り取られたように聞こえなかった。


久々に実家に帰ると、親に気付かれないようにこっそりと物置へと移動し、押し入れを開け、アルバムを取り出した。
自分が生まれた時の写真を見たことがないような気がしたからだ。
案の定、俺の生まれた時の写真はなかった。
それどころか、写真が明らかに足りない。
もしかしたら、俺は捨て子だったのかと疑ったが、違かった。
アルバムの隙間からハラリと落ちてきた一枚の紙。
確認すると母の字だった。
震えた手で書いたのか、崩れた字体でこう綴られていた。

『龍之介は呪われている』

ぞわっと背中から冷たいものが競り上がる。
ばくばくと高鳴る心臓が、これ以上進んでいいのかと尋ねてくる。
震える手で紙を持ち、続ける。

『あの子が生まれてすぐ主治医が死にました。
あの子を抱いた看護婦が自殺しました。
出産の時に撮った写真は血塗れの病院を写し、あの子だけが取り残されてました。
すぐに祈祷師を呼びましたが、祈祷師はあの子を見た瞬間、発狂してしまいました。
嗚呼、もしかしたら、呪われているのはあの子ではなく、
私たちはひょっとしたら、悪魔の子を生んでしまったのかもしれません。
それでも赤子は愛らしく、私たちに媚びるのです。
龍之介、貴方がもし、これを読んでいるのだとしたら―…』

そこまで読むと、くしゃりと視界が歪んだ。
ずきずきと頭が激しく揺さぶられてる気がして、ぐるぐると気持ち悪いものが回って。

「…、う゛ぇっ…ゲホッう゛、はっ…っ!」

吐いた。
茶色っぽい、つんと鼻にくる臭いに再び、込み上げてくる。

「―ぅぐっ…げぇッ!」

びしゃびしゃと服やアルバム、紙を濡らしながら、床に手をつく。
苦しい。
目頭が熱くなり、生理的な涙が頬を伝った。
口の周りの嘔吐物が微妙に温くて、痒い。
汚れた手で拭うも余計に不快感が増し、少しだけ笑えた。

「は、ははっ…っ、ね、そこにいるんだよね?」



―side-キャスター―


ジャンヌと一緒に消えようとして、気づいたことがある。
それは、彼の不在だった。
ほんの少しの期間しか共用しなかったのに、どうしてこんなに違和感を感じてしまうのか。
どうして、こんなにも胸が騒ぐのか、分からなかった。
ジャンヌに少しだけ待っていてくれるように頼み込んで、龍之介が此方にくるのを待った。
彼は今回の聖杯で私より先に亡くなられました。
だから、きっと来る。
ずっと待っていても来なくて、もしかしたら先に行ってしまわれたのかもしれないと思った矢先に聞こえてきた産声。
私はジャンヌの制止も聞かず、禁忌を犯してしまいました。
私が向かったのは病院、目にしたのは一生懸命胎児を排出しようとしている妊婦とそれを支える家族と医者の姿でした。
胎児が姿を現すと私は言葉を失ってしまいました。

嗚呼、嗚呼!
なんということでしょう!
彼は私の元に来ることも出来ず、転生してしまわれていたのです。
私は愕然としてしまいましたが、やはり貴方は美しい。

『龍之介、まさか貴方の始まりを見ることになろうとは…これもまた、神の愛だと貴方は笑うのですか?』

主治医らしき男の肩に触れる。

『実に良いものを見せていただきました。龍之介、帰りますよ』

看護婦の腕に抱かれた龍之介に手を伸ばし、すり抜ける。

『これは…』



それからの日々はとても退屈だった。
龍之介に私は見えてない。
傍にいるだけで龍之介の周りに災厄をもたらした。
それなのに離れたくないという意志ががんじがらめになって私を縛り付ける。

龍之介!
貴方がこんなにも近くにいるのに触れられない!
気付かれない!

「…貴方には、雨生に害を与えることしか出来ません」

龍之介がレジに向かい、私も付いていこうとした時、呟かれた一言は確実に私に向けられていた挑戦状でした。
競り上がる殺意を眼光に乗せ、彼に掴みかかる。

『今まで私に気がついた方は複数人いましたが、ここまで愚弄してきたのは貴方が初めてです』



龍之介は狂ってしまった彼を見ても別段気にしてる様子はありませんでした。
以前より死に近い位置に配置された龍之介は前回とは違って死を探求するつもりはないようです。
その代わり、自身の身の回りに起きる現象を楽しんでいるかのような姿が垣間見えます。
例え、気づいてもらえなくても、私がいた証を残していきたい。
出来ることなら、今一度、龍之介…貴方の最期を今度こそこの目に焼き付けてみせましょう。
そんな意志をあっさりと打ち砕くかのように龍之介は呟いた。

「あんたは何を見て、何を聞いたんだ?」

言葉が詰まる。
龍之介…私はここにいます。
遠足の日を覚えてますか?
私は貴方の成長が嬉しくて、つい貴方の写真に一緒に写ってしまい、帰りのバスでもいの一番に見に行きました。
結果は察しの通りです。

そっと肩に触れようとしたら、やはりすり抜けてしまい、口を開いたところで言葉なんて通じなかった。

『龍之介…私は貴方の傍に』





「ね、旦那!旦那ってさ、鍋とか普通に食える?」
「鍋、ですか?」
「そう!色んな具材を鍋に入れて煮詰めるの!味付けはオーソドックスに味噌か、醤油がいいなぁ」
「ほぉ、それは興味深い」
「旦那ぁー食えないもんある?」
「いえ、貴方の作るものなら」
「りょーかいっ!」

「…ふふ、(…龍之介ェ!味噌と醤油かは選ばせてくれないのですね!!さすがです!!)」



――――……

続く

――――……





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