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昔からピアスというものに興味があった。
刺青に興味があった。
ケーキを作るのは楽しいし、紙を破ったりするのもこれはこれで嵌まる。
ペンを立て始めると何処まで行けるのか知りたくなるし、飴玉をゆっくりと舐めるのは惜しい気がした。

「進藤」

隣で寝ている男に声を掛ける。
名前を呼ぶとピクリと身体を振るわせ、此方へと振り向く。
眠そうな顔。
捻り潰したくなる。

「…んー?」

目を開きやがらないし、返事だって適当。
進藤の癖に生意気だ。

「眠れない」
「…あーそー」

外ではがらがらと風がなる。
ばんばんと窓を叩くような雨。
そのくせ、静かな夜。
寝息。
嫌い、大嫌いだ。

「しんどー…」
「……」
「しんどー…しんどー…」

台風が来る。
進藤が来れなくなる。
堀さんとも会えないし、学校もなくなる。
暗くて静かな夜が来る。

「……しん、ど…」

胸がギュッと、心臓をわしづかみにされたみたいに。
嗚呼、痛い。
ああ、いたい。
目を閉じ、両腕で身体を抱え込むように丸くなる。

「…さむい」

隣にあるはずの体温すら、感じられない。

「…宮村、」

ふと、不意に全身に温もりを感じる。
ばっと目を見開き、目の前を確認するとそこには進藤の胸があり、自分が抱き締められていたことに気がついた。

「あ、」
「あー…くそ、さみぃ…宮村、冷房効きすぎじゃねぇの?」

低く呟かれた声に、宮村は頬を歪める。
嘘だ。
進藤の身体、凄く熱い。
熱くて、暖かくて、心地良い。
ぽかぽかと身体の芯から暖められ、頬が異様なくらい熱くて、凄くむず痒い。
気を抜いたら口元が弛んでしまいそうで、思わず唇を噛み締めた。

「…ばか」



―――――……





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