▽幻でも(浦♀浦)
「愛してしまったんだと思います」
……2012/05/04 15:36
「綺麗だね」
俺は花が散ってしまった木々は少し物足りなく、寂しく思うよ。
俺がこの夢を見るようになったのは、一体いつからだろう。
自分とよく似た少女の夢。
春が終わり夏に向かう間の期間、彼女は毎年俺の前に現れる。
それは、叶わない恋をしてしまった俺の小さな反抗心と現実逃避の表れだったのかもしれません。
「秀はこの歌、好き?」
彼女はよく歌を歌う。
俺の知らない曲だったけど、不思議と耳に残る、嫌な気はしない。
むしろ好きな部類に入るのだろう。
「好きだよ」
「そう、良かった」
彼女の笑顔はとても好きだったけど、何故か鏡を見ているようでむず痒かった。
「秀」
「ん?」
「似合う?」
彼女はたまに少しめかし込んだような格好をすることがある。
今日は白いワンピースだ。
いつもの赤いワンピースではない。
白いワンピースは普段と打って変わって清楚でいて地味ではない。
彼女らしくていいと思った。
恥ずかしそうに頬を赤らめて、なんか、やっぱり女装をしている自分を見ているようで釈然としなかったが、素直に可愛いと思えた。
伝えると彼女は嬉しそうに微笑みながら、本当に?ってしつこく聞いてきて、なんだかほほえましかった。
もしかしたら、俺が女だったらこうやっていたのかもしれない。
そう思うと無性に泣きたくなった。
「秀は優しいね」
彼女は優しい。
こうして落ち込んでしまった俺を優しく抱き締めてくれる。
「…絶対に好きにならなきゃ良かった、なんて考えちゃ駄目だよ。約束よ」
何を言っているのか、俺にはよく分からなかった。
ただ、その日、彼女が耳に刺していた花が、花弁が嫌に赤くて目に付いた。
次の日、彼女が夢に出てくることはなかった。
また夏が来たのか。
そうか、来年まで待とう。
来年の一番に彼女に伝えたいことがあるんだ。
「……ん」
サァアっと吹き抜ける風に目を覚ます。
嗚呼、暑いから開けっ放しで寝たんだっけ。
夜風が冷たく感じ、閉めようと立ち上がると足元に何かが落ちてることに気がついた。
「…これは」
赤い花弁。
彼女は散った花を綺麗と言った。
ただ、なんとなく、もう彼女は来ないのだろうと思った。
――――――……
♀浦の謎の立ち位置
うん、謎すぎて没にしたやつです
無理矢理終わらせてみました
最初と最後で設定が変わっちゃったというのも一つですね
よく考えずに書くとこうなります
一貫して言えるのは、♀浦が井浦の幻覚、夢だったってことです
1に好きな人に拒絶され、好きにならなきゃ良かったって思い、自殺した少女
2に井浦の心が負に傾いた時、自殺をさせようと囁く死神
3に井浦に心が移ってしまった女の子
ですかね
最後の白いワンピースは少女の決意というわけで二回目の自害です
また、少女は井浦のパラレル的な女の子で
最後は1のように自害してしまったように見えなくもないですね
ようはその人の取りようってことで
―――――……