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▽春の夢(柳浦)


「あかね、」

……2012/03/10 22:47


笑う。
笑う。
嗚呼、やっぱり君は一番綺麗なのだと胸を撫で下ろす。
何を馬鹿なことを。

「井浦くん」

呼ぶと振り返るその姿に愛しさを感じ、腕の中に閉じ込めてしまうと困ったように笑いながら、手を重ねてくれる。
この胸に溢れるものはきっとピンクに染まっているのだろう。
いや、君の緑色かもしれない。
そうなら嬉しいな。
もうすぐ冬が明ける。
冬が明けると雪が溶け、桜が咲き誇り、若草の香りが君を包むのだろう。
そしたら、この頬を切るような寒さから解放され、柔らかな陽射しが君の色を一段と強めるのだ。
待ち遠しい。
腕に力を込めながら、君の首筋に顔を埋めた。

「楽しみですね」

こくりと頷く君にゆっくりと瞳を閉じた。

―――――……






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