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「あかね、チョコ食べきれるん?」
「あ、はい!気合いで何とかします!!」
「……(まさかの精神論)」

―――――……


貰い物


(仙浦)


「仙石さんって甘いもの、大丈夫?チョコレートとか…」
「え?なんで?」


生徒会室。
レミも桜も用事があるとかで先に帰ってしまい、何故か俺は井浦くんと二人っきりであった。いつもならチョコレートは大好きと答えるのだが、今日はバレンタインともあり、柳くんほどではないにしろ沢山のチョコレートを貰ったので正直暫くは見たくないのが本音である。

「んー…微妙かな」
「…そう、なんだ」

ガッカリしたように肩を落とした井浦くんの視界の先には紙袋に詰まったチョコレートがあり、なんだか見せびらかしているようで申し訳なかったのでゆっくり指を差した。

「井浦くん。俺一人じゃ食べきれないから良かったら協力してくれないか?」
「いいの?仙石さん宛でしょ?」
「悪くなるよりはましだろ」

珍しく遠慮をする様子の井浦くんに本当、変なところで空気を読むのだと苦笑いをした。

「そうだ、井浦くん」
「なに?」

一向に動こうとはしない井浦くんに声を送る。本当、遠慮なんていらないのに。

「チョコレートちょうだい」
「っ…は?さっき食べきれないって言ってたじゃん」

驚いたように目を見開く井浦くんはすぐに自虐的な笑みを浮かべた。

「全部は食べきれない。でも、井浦くんのチョコは食べたい」
「…ワガママ会長」
「いいじゃん、生徒会長なんだから。たまにはさ」

ゆっくりと井浦くんの白い頬に手を伸ばし、優しく撫でる。少し冷たくて柔らかい。身を委ねるように目を閉じた井浦くんは呟いた。

「ないって言ったらどうする?」
「井浦くんを食べる」
「……仙石さんのエッチ」

笑った井浦くんの頬には小さくえくぼが出来ており、可愛いと思ってしまった。

「そうだ、俺からのチョコがまだだったね」
「…仙石さん、チョコ用意してない」
「じゃあ、井浦くんを食べなきゃね」

笑って井浦くんを抱き締めると小さく抱き返してきた。それから深く口づけをし、横目でチラリと井浦くんの鞄を覗くと小さな箱が見えており、内心笑みを浮かべた。


本当、素直じゃない。


――――………

エッチい会長、誰これ(笑)
続きは各自、妄想ってことで


――――――……


チョコレートボーイ

(石浦)


「今年も柳はたくさん貰ってんな」

放課後の人の少ないクラスで、机の上にどっかりと腰をおろしていた石川は呟いた。視界の先には女子から貰ったであろう沢山のチョコレートが詰まった紙袋を抱えながら帰っていく柳の姿。

「羨ましい?」

シャカシャカと音を漏らすヘッドフォンを耳から外し、首におろした井浦はからかうような目で石川を見つめた。そんな井浦の視線を鬱陶しがるように石川は手を振った。

「まさか、本命だけで十分だ」

それだけ言うと机から降り、目の前の椅子に座っていた井浦の顎に手をかけ、視線を合わせた。

「秀」
「溶かして固めただけだよ?」
「馬鹿だな…お前から貰いたいんだ」

にっこりと笑う石川に恥ずかしそうに目を逸らした井浦は鞄に手を入れるとおずおずと小さな箱を取り出した。淡い緑色の包装紙に包まれたそれを石川の胸に押し付ける。

「言っとくけど、返品とか出来ないから」
「誰が返すかよ」

そういうと石川は井浦のチョコを手に取り、包装紙をビリビリと破いた。

「えっ…あ、食うの!?」
「当たり前じゃん」

箱に詰まった少し大きめのチョコを眺め、石川はかぶりついた。

「ハートとかなかったのかよ」
「…そんなの恥ずかしくて使えるかよ!」

真っ赤になって言う井浦の様子に苦笑いをしながら、石川はチョコを食べた。そして、食べ終わると心配そうに見つめてくる井浦の頭に手をのせ、優しく撫でた。

「ほら、もうこれで返せねぇだろ?」


チョコレートボーイ


「あ、」
「な、なに?不味かった?」
「いや、全部食べないで持ち帰るんだったなぁって」
「は?」
「だって秀のチョコレートだぞ?勿体ないじゃん」
「…〜〜〜っ!知るか!!」

――――……






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