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ショートケーキの上に乗っている苺を横に落とす。
楽しみは最後に取っておく方だ。
そんな俺を不思議そうに横目で見つめる秀はどうやら最初に食べてしまう方らしい。
すでに苺は残ってなかった。
真っ白なクリームの海で真ん中だけが桃色にくぼんだ秀のショートケーキ。
口の端にクリームでも付けてくれたら可愛いのだろうと落とした苺を秀のくぼみに埋めた。

「…石川?」

可愛く小首を傾げる秀に笑みを浮かべ、頭を撫でた。

「何でもない」

小さく一口サイズにフォークの上に乗せたケーキを秀の口へと運ぶ。
条件反射のように開かれた口にわざとクリームが口の端に付くようにフォークを差し込み、秀が飲み込むのを待ってから顔を近づけた。


甘く蕩ける

真っ赤になる君が見たくて。


――――――………


昔一回だけ秀を怒らせたことがある。
理由は何だったろう。
自分のことでは決して怒らない幼なじみを怒らせたということはそれ相応のことをしたのだろうが、いかんせん幼かったからか思い出せない。
それに今ではもう秀は決して怒らなくてもいい方法を見付けてしまったのだ。
きっともう秀が怒ることはないだろう。
ぶらんと投げ出された手足に虚ろな瞳。
やっと手に入れたのだと笑う。

「俺が守ってやるからな」

秀の唇が微かに開き、何かを伝えようとしている。
ありがとう?愛してる?
いや、どっちにしても俺がお前を愛していることには変わりないよな。
震えた瞼にキスを落とせば、涙が零れる。
よっぽど嬉しかったのだろうか。


――――――……


愛してるって四回だけ聞いた。
告白された時と返事をした時と初めてキスをした時と彼奴が凄く嫉妬をした時だ。
言うと消えてしまいそうで言えなかった言葉がある。
いつも貰ってばかりで、不安にさせて。
悪いと思っているのにいざとなると立ち竦んで。
ごめん、なんて死んでも言えないから。
ありがとう。って言うんだ。
すると凄く嬉しそうな顔をするから俺も嬉しくなる、でも少しだけ物足りなそうな顔もしてるよね。
俺が言わないから。
返さないから。
この距離感に満足して曖昧になっていた。
でも、俺だってもっと言って欲しいから。

石川、ねぇ石川。
聞いて、聞こえてる?

今はまだ扉越しにしか言えないけど、俺はちゃんとお前を

「愛してる」

バッと開いた扉に当たってしまわぬように後ろに下がるとそこはちょうど石川の目の前。
驚いたような顔をして固まっている石川に近づくと眉間を軽く指で弾いた。

「ばか…俺がお前以外を選ぶわけがないだろ」

口に出すと涙が溢れてしまいそうで目尻にキュッと力を入れ、笑った。
唇を噛み締める顔にお前もかよ、なんて脱力しながら首にゆっくりと手を回すと背中から抱き返してくれる。
この温もりが何よりも大好きなんです。


―――――――……


一本目は甘い=スイーツ
二本目は甘い=ドロドロ
三本目は甘い=ラブラブ

の三段階でした!

いや、そんな深く考えてなかったんですけどね

そして三本目は省略しすぎて石川がヒッキー(笑)

まぁ、とりあえず!
アンケートご協力ありがとうございました!!

これにて第一回は完結で御座います!!



m(_ _)m

―――――……





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