理解したい。
好きだから理解したいと思うんだ。
なんて真顔で言う宮村に思わず、笑ってしまった。
だって、お前にはもう。
「宮村は本当に欲張りだな」
手を伸ばし、その黒いワックスで固められた髪を撫でると宮村は唇を噛んだ。
違うって言いたいんだろ?
知ってるよ。
知ってるけど、知らない。
「進藤、好き」
「ありがとう」
制服の裾にすがり付いてくる宮村の頭をそっと抱き抱えた。
「俺も宮村のこと、好きだよ」
ばっと顔を上げる宮村が期待してしまわぬように手を離し、付け加えた。
「だって、親友だろ?」
瞬間、悲しそうに顔を歪めた宮村から顔を背け、携帯を取り出した。
「あぁー…千佳と待ち合わせしてたんだった」
時間だけ確認し、パタンと閉じた携帯をポケットに仕舞うと荷物をまとめ、宮村に声をかける。
「じゃあ、俺、帰るから」
慌てたように手を取ろうとする宮村を避け、扉に手を伸ばすとぐっと後ろに引かれた。
「………」
背中から抱き締めるように回された腕に手を重ね、何も言わない宮村に小さく呟いた。
「最初に裏切ったのはどっちよ?」
ピクリと体を震わせたそれを答えと受け取り、宮村の腕を無理矢理引き剥がした。
「進藤!」
それでもまだしがみついてくる宮村。
ぐいっと手を引かれ、そのしつこさに思わず振り返ると。
「…っ!?」
至近距離にあった顔が口を奪い、後頭部を強く押さえ込まれた。
それも一瞬。
すぐに手を離した宮村は背中を向けるとゲームの前に座り込んだ。
「早く帰れよ、千佳ちゃんが待ってんだろ」
「あ、あぁ」
宮村のアパートから出てすぐ膝が笑ってしまい、俺は植木の陰に思わずしゃがみこんでしまう。
宮村に触れられた唇は熱く今でも鮮明にその感触を残していた。
気を抜くと目頭が急に熱くなる。
この目からポロポロと零れる液体は何だったろう。
期待してしまうのは一体どっちだろう。
それでも俺は言わなきゃならない。
先に裏切ったのはお前の方なのだと
――――――……