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世界は何回も何回も最悪と悲劇を繰り返す。
救っては崩れ、戻る。
これも何回目となるだろう。
世界は今日も勇者を選出しては魔王を仕立てあげる。
普通は逆と思うだろうが、正義というものが存在しなければ悪は露見しない。
最初に正しいと述べてしまえば、それが正論となってしまうのだ。
皮肉なことにそれが覆されるのはよっぽどのことがない限り、おおよそ有り得ない。

今日、世界で勇者の選出が行われた。
選ばれるのは世界でたった一人。
その中には俺も含まれていて、合格者には国王から直々に手紙が送られてくるのだが、それはもう赤紙と大して変わらない、呪いのようなものだ。

『汝、定めから逃れることを赦さず』

魔王に選ばれるのは、奴隷が多い。
たまに貴族で、時折大臣。
女性が選ばれるのは本当に稀で、選ばれる方法にはある一定のルールがあり、それを満たさなければならないらしい。


手元に残った焼き印を見つめた。
国王、直筆の手紙。
別に高価なものではない。
王子である、石川にとってはただの親父の手紙。
そう、今回の選出で運命は何を思ったのか王子である石川を選んだのだ。
そして、魔王には。


「…秀」


何気なしに呟いたつもりだったが、思いの外、低い声となってしまい、ピクリと目の前に立っていた青年が身体を震わせた。

「なんで、なんだ?」


尋ねると困ったように眉を寄せた彼の様子に石川は思わず脱力し、手紙をテーブルの上に置くと青年、井浦を手招きした。
戸惑いながらも近づいてくる井浦の腕を掴み、多少強引に引いた。
咄嗟のことに反応しきれず、石川の上に崩れ落ちる井浦は石川に触れると焦ったように顔を上げる。

「申し訳ありっ――…ひゃっ!?」
「俺が手を引いたんだ。秀は悪くない」

井浦の腰に手を回した石川は撫で上げるように井浦の臀部に指を這わせた。
石川の手を拒絶することも出来ず、石川の足を跨ぐようにして長いソファーに膝をつき、石川の肩に額を当てるようにして、快楽を流した。

「ひぅっ…ん」
「なぁ、秀」

腰の付け根の部分から若干緩いズボンの隙間に手を入れ、下着と共に膝くらいまでおろす。
そして、臀部の割れ目に指を伸ばし、シワを伸ばすように指で揉んだ。
恥ずかしいのか、顔を隠そうと下を向きながら殺したような喘ぎ声をあげている井浦。

「はぁっ…ぅんっぁあ!」

掠れたような声に顔を見たくなり、顎に指で支え、無理矢理上を向かせた。
上気した頬に、涙で歪んだ瞳、口の端から溢れた唾液を人差し指で拭うとそのまま後頭部に手を回し、深く口付けをした。

「んっ…ぅんん」

貪るような口づけで、秀の口内を荒し、舌を絡めた。
必死で応えようとすがってくる手はいつしか首の後ろに回っており、より強く後頭部に回した手に力を込めた。


なぁ、秀。
このまま、運命すら捨てて二人で何処か遠くの誰も知らない場所で。
言おうとして止めた。

だって。


誰も知らない場所なんてこの世界にはないから


下手な夢を抱くより。
目の前の君を抱いていたいと思うようになったのは、いつ頃からだろう。

―――――……






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