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入り口を入ってすぐのカウンターに仙石さんはいつもいる。
読書をしていたり、フルーツオレを飲んでいたり、昼寝をしていたりと実に自由ではあるが、営業中は決してそこから動かない。
問題などが起こった時すら動かなかった人だ。
その意志はもうただの堕落とも取れた。

「仙石さん」

人の少ないフロントに響いた。
客は昼間だからか一人もいない。
ちなみに俺も客ではないのだ。

「井浦くん、珍しいね。柳くんはどうしたんだい?」
「あぁ、あかねは買い物に出掛けててね」
「井浦くんが一人でここに来るのは初めてじゃない?」
「いや、一番最初、謝りにきたっしょ」

苦笑いをしながら言うと仙石さんは不機嫌そうな顔をして、あぁそうか、と呟いた。

「まぁ、別にもういいよ。あれはあれで評判いいから」
「…仙石さん」

この人は分かりにくいが、とても優しい人である。
分かりにくいのが難ではあるが。

「あ、」

思い出したように小脇に抱えた瓶の詰められた箱をカウンターにあげた。

「これは?」
「宮村のお土産。勿体ないから寄付」

色に使おうとしてあかねに怒られたことと中身があれであることは黙っておいて、俺は瓶を一つ取り出すと卓上にあけた。
サラサラと黄緑の粉が姿を現す。

「入浴剤」
「あぁ、宮村くん確実にお土産の中身間違えてんじゃん。俺のとこには何かのアニメのシールが入ってたよ」
「あははは、宮村らしい」
うっかり者の新聞記者。
じゃあ、俺のお土産は何だったんだろう。
そして、誰に渡ってしまったのか。
多分、真相は本人も知らないんだろうな。

「仙石さん」
「なに?」
「絵を描いてもいいかな」
「なんの?」
「仙石さん」
「冗談、うちは取材禁止。もちろん絵だってお断りだよ」

本当に嫌そうな顔をしている。
不思議と笑えた。

「仙石さん」
「なんだい」
「もし、俺が誇れる絵を描けた時はここに飾ってくれないかな」

仙石さんは少しだけ考えるような素振りを見せた後、カウンターの下からフルーツオレを取り出し、封をきった。

「…気に入ったらね」
「うん、約束だよ」
「あぁ、約束だ」


変わり者の店主


――――――……


死亡フラグっぽい(笑)


はい!
リクエストありがとうございました!
ちょっと変な風になってしまいましたが、完成いたしました!


今回は参加ありがとうございました!

またの機会で出逢えること、楽しみにしております!

それでは、またm(_ _)m

―――――……





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