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こういうのは苦手だと秀は笑った。

特に何も考えてなかったんだろうが、擦りむき血の滲んだ足を押さえながら苦笑いをする秀を見て、俺は急に胸が苦しくなった。
二度と秀にこんな顔をさせたくない。
俺が守んなきゃ。
秀を守んなきゃいけない。
無意識に生まれた誓いが俺の根本に根付いて離れなかった。


「秀。俺が代わりにやっておくから、お前は少し休んでろ」

体育の後片付け。
マットは重く、足場もそんなに良くない。
これで秀が怪我をしたら、大変だな。
先回りをするようにして言った。

「いや、そんくらい自分で持てるし」

トコトコと小走りで近づいてくる秀。
転んだら、どうしよう。
この弱い幼なじみに傷がついたら。

「転んで怪我でもしたら大変だろ。危ないから下がってろ」
「俺は何処の幼児だよ」

拗ねたように頬を含ませた秀のあどけなさに思わず、笑みが溢れた。

「いいから」

なんて念を押すように言うと秀は黙ってクラスの方へと戻っていった。


それから暫くして後ろを振り返るとそこにはクラスの子と一緒にハードルを片付けている秀の姿が。
危なくないだろうか。
もし秀がハードルで躓いたり、転んだ拍子にハードルに突っ込んでしまったら。
考え出すと止まらない。
俺は急ぐようにマットを片付けると秀のもとに走った。
もうすぐで秀の元に辿り着くなんてそう思った瞬間、秀がハードルを足に引っ掛けてしまった。
両手がふさがっており、どうすることもできない秀が正面へと倒れていく。


第一に体育という教科に秀が出ることに俺は反対でした。
彼が怪我でもしたら、俺はどうすればいいのでしょうか。
全く分かりません。
怖いんです。

教えてください、神様。

どうしたら、秀が苦しまないで済むんですか?

お願いします、神様。

どうか愛しいあの子にありったけの愛をください。


「秀!!」

間に合わない。
どんなに頑張って走っても、この距離からじゃ秀を助けることが出来ない。
止めろよ、お願いだから秀を傷つけるなよ。
俺は秀が苦しむ世界なら、―――…。


「うわっ…とっと」


倒れようとしていた秀が寸でのところ、大きく両手を広げることで転倒を防いだ。
ハードルは秀の体の下に綺麗に収まっていて。
ちょっと驚いたように固まって、暫くすると走っていた俺に気づいていたらしく、振り向いてにっこりと笑ってみせた。

「セーフ」
「何がセーフだ、この馬鹿」

横に来て、手を差し出すと秀は照れたように擦りむいた手のひらを見せた。

「汚いから、いいよ」
「おまっ…怪我してんじゃねぇか、保健室行くぞ」

皮が剥け、僅かに血の滲んだ、土埃に汚れた手のひらを避けるように手首を掴んで持ち上げてやる。
秀は笑いながら、大袈裟だと言った。


知らなかった。
秀がこんな風に自分を守れるだなんて。
だから、少しだけ安心した。

なんて、俺は過保護なんですかね。


地球は回るそうだ


「保健室まで背負ってやろうか?」
「えっマジで!?」
「(…断れよ、馬鹿)」


―――――…


色々履き違えてますが、
「過保護な石川と意外とできる井浦」でした

茉莉様、リクエストありがとうございました!!

―――――……






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