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「そういえば、今日は猫の日だったね」

誰もいない放課後の教室のロッカーを漁りながら呟いた。
後ろにいた井浦くんはヘッドフォンを首に下ろし、少し高い位置から覗くように背伸びをしていた。

「そうなの?」
「うん、2月22日だからにゃーにゃーにゃーで猫の日」
「にゃーにゃーにゃーって」

苦笑いを浮かべながら肩に手を置き、顔を近づけてくる仕草にわざとやってるのかと問いかけたい。
無論、井浦くんにそのつもりはないし、俺の勝手な思い込みなわけだが。

「あ、猫耳でてきた」

変なロッカーだ。
俺のロッカーなんだけど。
堀さんのイタズラかなと首を傾げ、なんとなしに井浦くんの方を向いた。

「なんで猫耳?」
「さぁ?」

見つけた単行本と猫耳を片手にロッカーの扉を閉める。

「はい」
「あぁ、どうも」

頼まれてた単行本を井浦くんに渡すと井浦くんは単行本をバックにしまい、そして猫耳を見つめていた。

「持って帰るの?」
「んー?井浦くん、どう?」
「宮村似合うんじゃない?」
「井浦くんの猫耳見たいなぁ」

じりじりと前に進み、後退していく井浦くんを追い詰める。
とん、と机にぶつかり井浦くんの動きが止まった。
すかさず猫耳を頭に付けようとするとわりと全力で阻止しようとしている腕に邪魔された。

「一回だけ」
「い、や、だ!」

ぐぐぐ…と地味な攻防が続くが力で俺が井浦くんに勝てるわけもないので、猫耳に気を取られている井浦くんの足を横に払った。

「うわっ!?」

派手に転び、椅子や机に身体を打ち付け床に後頭部をぶつけた井浦くんに同情しながら、井浦くんの足の間に身体を挟ませるようにして乗り上げ、両腕を頭上に一纏めにした。

「ネクタイしてくるんだったぁ」
「なんで?」
「あ、井浦くん、バックにネクタイ入ってたよね」

理由など聞かずとも分かるくせに。
もがく井浦くんの中心に膝を立てると脅迫するように耳打ちをした。

「…潰すよ?」
「…っ!」

真っ青になりながら首を振り固まる井浦くんを一瞥すると、ゴソゴソと井浦くんのバックを漁り、ネクタイを取り出し頭上で一纏めにされた手首に回した。
別々に軽く結び目を作ると上体をゆっくりと持ち上げ、後ろ手に固定する。
何回も引っ張り、外れないことを確認すると。

「よし!」
「宮村っ!ちょ、これ外せ!!」
「待って、今猫耳付けて上げるから!」

嬉々として井浦の頭に猫耳のカチューシャを付けた宮村は満足そうに笑った。

「ほら、やっぱり似合う!」
「いや、もう満足だろ!?手、ほどいて!昇降口で石川、待ってるんだから」
「んー…にゃーって鳴いてほしいな」

笑いながら更なる要求をしてくる宮村。
この状況で逃げることは不可能。
ここは大人しく従うしかないのか。
井浦は耳を赤くしながら小さく口を開いた。

「…ぁ、にゃあ…」

ぷいっと顔を背ける井浦に興奮したように宮村の顔に笑みが刻まれる。

「も、もう一回!よく聞こえなかった!!」
「やだよ!!」


猫の日


「な、何やってんだ、お前ら…」
「あ、石川くんだ」
「石川!!宮村が変態!!」
「あ、あぁ…ずいぶんとマニアックなプレイの最中だったようで…コンテニュー?」


「no!!」「yes!!」


――――――………






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