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「今日、井浦くんが生まれたんですね」

柳は幸せそうに笑った。

「別にただの誕生日だよ」

大袈裟だと君は笑ったが、僕にとってはただの誕生日ではない。
何故なら、他でもない恋人の生まれた日なのだから。
誕生ケーキでも注文したり、プレゼントを渡したり、二人っきりで何処かに出掛けたり、そんな甘いのを望んでいるわけでない。
ただ、君が隣にいてくれるだけで嬉しい。

「井浦くん」
「なに?」

隣に座っていた井浦くんの手に指を絡めた。
所謂、恋人繋ぎ。
意識してしまうと何処と無く恥ずかしいけれど、直に君の体温が伝わってくるようで暖かい。

「ありがとうございます」
「ん?」

この世に生まれてきてくれてありがとう。
僕と出逢ってくれてありがとう。
愛してくれてありがとう。
それから、それから。
君にはまだ伝えてない感謝の言葉がたくさんある。

不思議そうに首をかしげる井浦くんの唇にそっとキスを落として呟いた。

「忘れないでください」

この世界に存在する全ての愛を。
僕は君を愛しているという事実を。

君だけが知っていればいい。


君が生まれた日


――――――………






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