場所は変わって公園。
とりあえず、女子が騒ぎ出したので離脱。
不機嫌そうにベンチに座っていた北原に温い缶コーヒーを差し出した。
「コーヒーで良かったか?」
「はい、お兄さんから貰うものなら何でも嬉しいです」
さらっと恥ずかしいことを言ってみせた北原は相変わらずの仏頂面でコーヒーを受け取ろうとした、が。
「そんな顔してる奴に渡したくないんだけど」
「………すみません」
しょぼんと頭を下げた北原はゆっくりと手をおろした。
とりあえず、隣に座る。
「なんでそんな機嫌悪いわけ?早くしないともと心配しちゃうけど」
「お兄さんは優しいですよね。自分の予定より井浦さんですか」
「別にそんなんじゃないし」
元から誘われて、暇だからOKしただけだし。
もう来れそうにないって電話しとこうかな。
「俺、井浦さんのお兄さんが好きです」
「あっそ」
もっと露骨に拒絶してくれたら、諦められるのに。
確かに北原の目はそう語っていた。
敢えて、それを無視しているのは俺なんだけど。
冷えてきている缶コーヒーを持て余しながら、自分の分に買ったココアを開けた。
「北原は俺に嫌われたいわけ?」
ココアを傾けつつ、呟くと北原は心外とばかりに顔を上げるが、気づかない振りをして続ける。
「顔に書いてある」
「そんなわけないです」
「じゃあ、何?北原は俺をどうしたいの?」
エッチな発言したら、即殴る。
ちなみに俺の許容範囲はあかねまでだから、北原はギリギリアウト。
でも、受け止めようと思った。
それが北原の意志なら。
そんな俺の誓いを知らずに北原はゆっくりと口を開いた。
「俺は…お兄さんと…」
「うん」
「もっと一緒に居たいです。彼女とか作ってほしくないです」
俺だけを見てほしいし、本当は誰とも喋ってほしくない。
友達にもお兄さんのこと知ってほしくないし、俺が知らないお兄さんを知られるのも嫌だ。
井浦さんに優しくしないで欲しいし、ずっと俺のものになってほしい。
お兄さんの幸せを独り占めしたい、その為ならお兄さんを遠くに閉じ込めて、一生俺のものになってくれたら。
「こんな…醜い俺っ…知ってほしくなかったですっ…」
うつ向いた北原の膝の上に固く握られた拳にそっとコーヒーを当てた。
「俺はそういうこと、北原がちゃんと言ってくれて嬉しいよ」
「でも、幻滅しましたよねっ…」
ポタポタと溢れる滴に無意味に北原の頭を撫でていた。
「俺、別にお前のこと嫌いとか思ったことないんですけど」
「甘やかさないでくださいっ!」
パシンと乾いた音と唖然とした北原の顔に思わず、笑みが溢れた。
「あ、わり…気持ち悪かったよな」
「ちがっ…」
「俺、もうすぐ時間だからさ」
立ち上がろうと腰を上げようとした瞬間、北原が勢いよく俺の腕を掴んだ。
「…離せよ」
「嫌です」
「北原、もう一回だけ言う、“離せ”」
「嫌です。絶対に離しません」
「離せつってんだろ!!」
「嫌なんです!!」
「もう何なんだよ、お前は!いつもは無駄に近づいてくる癖に近づくと離れるし、離れようとすると離さないし!!マジ意味わかんねぇよ!!」
怒鳴った。
かなり久しぶりだった。
いつもの大声とは違った、ピリピリするようなシャウト。
北原は驚いたように目を見開くと、優しい笑みを浮かべてみせた。
「お兄さんは俺をどうしたいんですか?」
「知らねぇよ、…知るわけねぇじゃん」
怒鳴った喉が痛い。
腰をおとし、両手で顔を覆った。
そういえば、ココアどうしたっけ。
「俺、お兄さんが好きです」
「お前のお兄さんじゃ、ない」
ボソリとつい呟いてしまった。
それに北原は照れたような声を上げると、しどろもどろになりながら、言った。
「秀さんが好きです」
腕、掴んだままなんですけど。
とりあえず。
「コンパ、いけないって電話してくる」
「あ、はい。じゃあ、俺も井浦さんに来れないって連絡します」
焦ってように手を離した北原にこれぞ幸いとばかりにベンチから離れた。
井浦は一人、火照った頬を冷ますように冬の冷たい風に目を閉じた。
「はぁ…マジ、名前で呼ぶなよ」
merry X'mas
―――――…
クリスマス関係ない的な(笑)
そして、何も考えてなかったんでgdgd、すみません
おまけ↓
「北原くん、来なかったんだけど」
家に帰ると妹が仁王立ちで待っていた。
「もと、友達は?」
「皆、帰ったけど?」
怒ってます。
妹様は凄くお怒りのようです。
「そっかぁ…じゃあ、明日は北原呼んで兄ちゃんが飯でも奢ってやろうか」
「ふんっ」
現金な妹様は凄く現金のようで部屋に戻っていった。
まぁ、北原から連絡も来ていただろうし。
つか、なんて連絡したんだろう。
基子が友達を帰して、玄関に張っているなんて。
「あ、井浦さん?」
「北原くん?」
「ねぇ、お兄さん、貰っていい?」
「はっ!?」
「お、お兄ちゃん。脱いで」
「はぁ?なんで」
「何もないなら脱げるでしょ(←キスマークとか聞けるわけない)」
「寒いから嫌です」
「本当は、寒いからじゃないんでしょ!!」
「あ?」
「せ、仙石さんが好きなんじゃなかったの!?」
「いや、好きって…」
「そういうの二股って言うんだから!!」
「秀。クリスマスは悪かった」
「うるせ、裏切り者」
「石川!!クリスマス暇うら?」
「あ、わり。吉川と約束してんだわ」
「えー!!親友より恋人を選ぶの!?」
「お前も恋人作れよ」
「恋人が全てとか言ってるむっつりは自害しろ」
「却下」
「ちくしょー!!あかねぇ!!」
―――――…