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「秀は高校に入ったら、何すんの?」


卒業式を終え、俺達は証書を片手に慣れ親しんだ校舎ともお別れを告げた。
そして、その後はすることもなく石川の家に来ていた。
学ランだなんて、もう着ないと思うと少し惜しく思えて、なんだか脱ぎにくかった。
厳しい受験競争も今度の合格発表を残すのみ。
終わったというか、これから始まるなんて気も起きないわけで。
俺達はまだ高校生になるなんて自覚はなかった。
強いて言うなら。

「彼女作る!」
「それじゃ、小学校の時と何も変わってねぇじゃねぇか」

石川は呆れたように笑った。

「でもさ、小学校の頃は中学生になれば何かが変わる!とか思ってなかった?」
「あー分かる分かる」

石川も学ランを脱ごうとはせず、脱力するようにベッドに倒れ込んだ。
そのまま石川は枕に顔を埋めるとくぐもった声で笑った。

「俺ら、なんも変わってねぇな」
「高校に入ったら、変わると思う?」

井浦は含みのある笑みを浮かべ、石川に視線を投げた。
それに気づいたのか、石川も枕から顔を上げ、井浦に視線を合わせる。

「ぜってぇ、変わんねぇな」
「つか、変わるってなんだっけ?」
「知るかよ、ばーか」

石川はひとしきり笑うと仰向けに寝返りをうち、両腕を広げ、笑った。

「高校、同じクラスになれるといいな」

真っ直ぐに天井を見据えたその表情はまだ見ぬ何かに期待を抱いているように見えた。
井浦はそんな石川が眩しく思う。
お茶らけているように見えて、何処と無く客観的で冷めていた井浦。
一見、似たように思える二人の決定的な違いはそんな内面的なものなのかもしれなかった。
井浦は石川の言葉に静かに耳を傾け、普段は見せない種類の笑みを浮かべた。

「そうだな」

そう言うと井浦は石川の寝ていたベッドに近づき、ゆっくりと十字に重なるように横たわった。

「秀、ちょっと重い」
「こっちは背中が痛いですぅー」

ぱたぱたと足を動かし、井浦を退かそうとする石川に拗ねたような声を上げた井浦。
石川は苦笑いをしながら、起き上がり井浦の頭の位置が膝の辺りにくるように調節してやる。

「お前は本当、昔から変わんないな」

膝の上で居心地良さそうに目を細めた井浦の頭の撫でながら、石川は笑った。
比較的優しい笑い方だったと我ながら思ってしまう。

「だったら、石川はもっと変わってないじゃん」

井浦は目を閉じて、呟いた。
最もだ、なんて。
俺も秀も大概馬鹿だ。
どうせ俺らは高校に入っても変わんないんだろうな。
今度は確信を持って思えた。


変わらない君に

変わらないで、とか


―――――――…


多分、井浦はめちゃくちゃ変わったと思う。
小さい頃は基子ちゃんばりに暗かったと思うんです。
それで石川に会って変わったけど、当の本人(石川)は気づいてない的な。
井浦は元からこんな奴だったろ?みたいな。
だから、井浦くんは昔話が嫌いなんですね、分かります。
この後、井浦に彼女が出来て、別れて。
柳と出会って、石川に彼女が出来る。
一番、二人の仲が深かったのは中学とか萌える。
でも、お互いに気づかないで終わるーみたいな。
知らず知らずのうちに終わってた初恋なんて、石浦らしいと私は思う。
友情との区別がつかない愛情とか!とか!!


―――――……






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