男性恐怖症。
ただ普通の精神状態で普通に接している分には大丈夫。
けれど、ストレスが一定値を越えたり、ある一線を越してしまうと秀は極端に弱くなってしまう。
「つまり、由紀が心配して近づいたのが裏目に出たってことか?」
泣きながらも井浦を守ろうと必死に抱き締めている石川にお手上げとばかりに堀は溜め息を吐いた。
「えー俺が悪いのかよー」
「実際に悪かっただろ」
不満そうに井浦を見つめていた吉川と吉川がこれ以上動かないようにと押さえている堀。
宮村は泣き出しそうな仙石を慰めていた。
仙石が泣く必要なんて何処にもないんだけど。
「とりあえず、井浦が落ち着くまで待つからさ。それまでに事情整理しとけよ。洗いざらい聞くからな」
不器用でも優しい仲間に込み上げてきた涙を堪えるように石川は頷いた。
「ちなみに吉川は何も覚えてないの?」
数十分後、少しは落ち着いたのか石川はゆっくりと口を開いた。
「何を?」
「…最低」
首を傾げる吉川にボソッと石川は呟いた。
あれだけのことをしておいて覚えてないとか。
若干、遠い目になる石川に周囲からの視線も吉川へと集まっていく。
「え…なんか、俺…やった?」
ゆっくりと頷く石川に吉川の額にはうっすらと汗が浮かんだ。
ヤバい。
思い出せない。
元から馬鹿とは自負していたが、ここまで自分を追い詰めることになろうとは。
「…秀?」
もぞりと石川の腕の中で身動ぎをする井浦。
少し力を緩めてやると石川の耳に顔を近づけ、何かを言うとガバッと石川を押し倒し、跨ぐような形で足早に去っていった。
「…っ!!」
「逃げた!?」
「さすが井浦だな、あの運動神経」
「堀くん!感心してる場合じゃないよ!!」
「石川ちゃん、大丈夫?」
仙石の声にハッとしたのか、石川は声を張り上げた。
「追え!!吉川!!」
「えっ…俺!?」
動いた世界
勝手に進むことを許して下さい。
―――――…