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「…いしかわ…何処にも行かないで…」

小さく呟かれた言葉に石川は井浦の手に手を重ねた。

「大丈夫、何処にも行かないよ」

出来るだけ、仙石も驚くくらいの優しい声で返した。

「井浦!!」


すると何処からか駆け足で近づいてきた堀に石川は小さく舌打ちをした。
なんで今日に限って人が集まるんだ。
ピクリと井浦の身体が震えたのを感じたのか、石川は堀に言う。

「ごめん、ちょっと堀と吉川、そこを動かないで」
「は?」

理解不能と眉をひそめた堀と慌てて堀を止めようとする宮村。
とりあえず、宮村の行動に安全と判断したのか石川はホッと息を吐き、井浦の身体をより一層引き寄せた。
強張った身体を解すように背を撫で、抱き締める。


「何?井浦、調子悪いの?」


ぽんっと井浦の頭の上に置かれた手のひらをギョッと見上げる石川。
頭上にはいつも通り、能天気そうな吉川。
思わず、石川の眉間にシワが寄った。

「吉川、動かないでって言ったよね」

珍しい、石川のとげのある口調に吉川は笑いながら、井浦の頭を撫でる。
多分、話なんて聞いてない。

「井浦、何処か痛いの?大丈夫?保健室まで送ろうか?」

膝を折り、下から覗いてくる吉川に井浦は僅かに震えた。

「吉川、離れて」
「なんで?井浦、めっちゃ具合悪そうじゃん」

引き離そうとする石川に吉川が不機嫌そうに顔をしかめた。
違う。
そうじゃなくて。
みるみる内に青ざめていく井浦に石川は焦っていた。

「ね、ねぇ…石川ちゃん。井浦ちゃん、本当に顔色悪くない?」

仙石のそんな声にすら、苛立ちを覚えた。
近づくなよ、これ以上、秀を傷つけるなよ。

「井浦、」

更に吉川が井浦に近づき、その手を取ろうとした瞬間、石川は唐突に立ち上がり、吉川の手をはね除けた。

「触んな!!」
「…え?」
「見て分かんないのかよ!!怖がってんだよ!!男が秀に触るな!!みんな、みんな、馬鹿みてぇな顔しやがって!!お前みたいな考えなしのせいで秀はっ!!秀は…!」

爆発したように怒鳴り付けた石川はそのまま井浦を抱いたまま、その場に崩れ落ちた。

「…返せよっ…返してよっ……秀は悪くないだろっ…!」


君の秘密

バレたら、消えてしまいそう。


―――――…






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