姉ちゃんの恋人が家に来たとき、たまたま姉ちゃんが電話中で俺は姉ちゃんが居ないと嘘をついた。
あっさりと騙されてしまう姉ちゃんの恋人に拍子抜けした。
そして俺は姉ちゃんの恋人に向かって、言う。
「姉ちゃんから手を引いてください」
きょとんとした顔が時間差で不愉快そうに歪むのを心の何処か片隅で楽しんでいたのかもしれない。
まさか、姉ちゃんがその数日後、頬を腫らして泣きながら帰ってくるとは夢にも思わず。
「北原さんは姉ちゃんの何処が好きなの?」
世間話。
この人は姉ちゃんの話をすると凄く喜ぶ。
俺はそれを自分の幸せにするんだ。
「強くて、凛として格好良いところ!」
淀みなく言い切ってみえた北原をもとは少しだけ眩しく思えた。
俺は、そんなに素直に言えない。
窓から覗いた空は青く何処までも終わりなく続いている。
そう、あの空にいくら手を伸ばしたところで掴むことは叶わないのだ。
ならば、この思いもきっと同じ。
手を伸ばすだけ無駄なんだ。
「井浦ちゃん…ですか?」
柳は戸惑っていた。
正直、嫌な話ではあるが、体育館裏に呼ばれるのは慣れている。
しかし、そこで友人の名前を出させるとは思いもよらず、柳は困ったように首を傾げた。
相手の男性はそんな柳の様子に焦りながら、とある小さな包みを手渡した。
独占欲の結末
貴女を幸せにすることは出来ない。
――――――…