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冬になると彼は炬燵に籠るようになる。
小さな正方形の炬燵櫓に長い足を折り畳むように仕舞い、炬燵蒲団を肩口まで寄せる徹底的な防寒振りに思わず頬が緩んでしまうのが自分でも分かる。
ひょっこり緑色の頭だけが出ているのを撫でてやれば気持ち良さそうに猫のように擦り寄ってくる。

「何か温かいものでも飲みますか?」

訊ねれば、声もなく首を左右に振る。

「そうですか。折角、宮村君のところから美味しいケーキを頂いてきたんですが、残念です」

ゆっくりと立ち上がれば緑色がピクリと震えた。
くすりと目を細めながらもう一押し。

「あーぁ、残念です。仙石君達からクリスマスに頂いたココアがあるんですけど、井浦君がいらないっていうなら淋しいですが、一人で飲んでしまいましょう」

仕方ない、仕方ない。井浦君の為に淹れてあげようと思ったのですが、と言えば慌てたようにやっと緑色の顔が出てきた。

「待った待った!! 待って! 待ってってば! 飲む、飲みます! あかねー、俺も飲むし食べる!」

ガバッと上がった顔はずっと炬燵に入っていたからか真っ赤に染まっていて、その必死な様子も合わさり、非常に滑稽なものであった。
僕は喉の奥でくすりと笑いながら井浦君のマグカップに手を掛けた。

「炬燵もいいかもしれませんが、程々にしないと妬きますからね」

井浦君は今度は炬燵の熱とは違った種の赤を耳まで帯び、炬燵蒲団で顔の半分を覆った。



―――――――


「炬燵に妬くとか、ばっかじゃないの」
「ココア一つに焦って叫んでた人に言われたくありませんね。ね、井浦君?」
「うー……あかねが意地悪だ」
「恋人のためですから、幾らでも意地悪になりますよ」
「恥ずかしいこと、平気で言うなぁ」
「井浦君のこと愛してますから」
「あーもうっあかねのイケメン!大好き!!」
「ふふっありがとうございます」







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